基盤整備後の大区画ほ場の地力差を可変施肥で改善 お気に入りに追加
センシングデータに基づく可変施肥で、水稲の収量・品質へ及ぼす効果を検証
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5月10日、新潟市西蒲区で、令和5年度の全国農業システム化研究会の現地実証調査の一環として、可変施肥田植機による田植え作業が行われました。今回のテーマは、基盤整備後の大区画ほ場における地力差を可変施肥技術で改善し、生育のばらつきをなくすことで収量と品質を向上させることを目的としています。実証では、前年成熟期のセンシングデータを基に、KSASで作成した可変施肥マップをクボタ田植機NW8Sと直接通信することで可変施肥を行いました。今回のレポートでは、実証に参画した皆様の声を中心に、クボタの可変施肥技術についてご紹介します。

目次

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実証担当者の声

新潟地域振興局 巻農業振興部
(巻農業普及指導センター)
課長代理 萩野 孝司様

栽培管理が難しい基盤整備後の大区画ほ場

巻農業普及指導センターは、新潟市の西区と西蒲区の2区を管轄しています。この地域は、平坦な水田が広がる稲作地帯ですが、近年の米価低迷と資材費の高騰により、稲作経営は厳しい状況です。さらに、高齢化による耕作者の減少が進んでおり、農地の受け手不足も深刻な問題となっています。そのため、県では基盤整備事業を進め課題解決を図っています。管内では、まだほ場整備が遅れており、未整備ほ場が多い状況ですが、実証ほ場のある中之口地区は大区画ほ場整備がすでに進行中です。大区画化すると、作業効率が上がり、労働時間の短縮化が期待されるわけですが、一方で非常に大きいほ場ですので、栽培管理が難しいというデメリットも生まれてきます。

新潟市のサンケイ新潟様の実証ほ場で行われた可変施肥田植え作業

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可変施肥技術で生育のばらつきをなくすことが実証テーマ

サンケイ新潟様では、今回のほ場について、地力差や高低差があるほ場を合筆したため、ほ場内で生育状況が違うという課題を抱えていました。このほ場では、新潟県の良食味米の新品種「新之助」を昨年作付けしましたが、収量や品質が思い通りの結果には至っていませんでした。そこで、今回の実証を通じて、1haの大区画ほ場において、クボタさんの可変施肥技術で、いかにばらつきをなくして、収量も品質も高いレベルに上げられるかということをテーマとして取り組む予定です。実証試験では、前年成熟期のセンシングデータを用いて、可変施肥で基肥を田植え同時で側条施肥し、水稲の生育に及ぼす影響を検討します。また、生育途中でもドローンによるセンシングデータを使用し、生育状況に応じた可変で穂肥を施用、生育を均一にし、最終的に高収量、高品質な新之助を収穫する予定です。

1haの大区画ほ場で実施された可変施肥の実証

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生産者の声

有限会社サンケイ新潟
代表 渡邉 一成 様
【栽培面積】
水稲75ha(コシヒカリ32ha、こしいぶき29ha、みずほの輝き9ha、新之助5ha)、
大豆5ha、いちご9a等

基盤整備後の大区画ほ場において生育ムラの改善が急務

今、一番の課題はまず担い手の高齢化です。ほ場が集約して大型化してるので、今まで農薬散布とかは手撒きでしたが、それが重労働化しています。また、ほ場整備後の農地で稲作を行っているということもあり、生育ムラの改善が急務という状況です。今年の実証のために、クボタさんの協力を得て、去年の秋からドローンのリモートセンシングで可変施肥のマップを準備しました。生育にムラがある部分を改善し、均一化することで、経営的な効果を得たいという狙いで取り組んでいます。

前年成熟期のKSASリモートセンシングデータを活用し可変施肥田植えを実施

実証で実演機NW8Sに試乗し直進キープ機能を体感する渡邉様

高騰する資材費の負担軽減にも期待できる可変施肥

肥料も薬剤も価格が高騰しているので、少しでも負担を軽減できればと、可変施肥には期待しています。面積が大きくなればなるほど、その差が広がりますから。今後、可変施肥のできる田植機を導入して使うことになったら、KSASが必要になると思います。KSASのメリットとして、機械が動いたら自動的にデータが入ってくるので作業を見える化できますし、機械との連携にも魅力を感じています。経営面でスマート農機に期待しているのは自動操舵ですね。誰が乗っても作業の効率が落ちないというのは魅力的です。

乾田直播やドローン防除による作業の省力化に期待しています

規模拡大で面積が毎年増えているので、育苗を少しでも減らせるように、今年からV溝乾田直播に取り組んでいます。まだ新潟県では乾田直播が少ないのですが、規模拡大に対応して、作期分散を考えたときに、秋に代かきができる上、移植と比べて収穫時期を遅らせることもできるので魅力を感じています。今年は、新潟クボタさんのサポートで、自動操舵システムを搭載したトラクタで実演をしていただきました。乾田直播は、春作業を省力化できる技術として経営に役立てていければと思っています。また、今まで手撒きだった農薬散布も、今年から導入したドローンで負担軽減につながればと思っています。

作業前にKSASの可変施肥データをNW8Sにダウンロード

設定された可変施肥マップの指示通りに施肥するNW8S

クボタの解説

株式会社クボタ
アグリソリューション推進部
技術顧問 渡辺 広治

KSASによる可変施肥で収量・品質向上を目指す

サンケイ新潟様は、ほ場整備後の農地で稲作を行っていますが、生育ムラが課題となっています。新之助の場合、県の目標値としては、収量は540kg/10a、玄米タンパク含有率は6.3%以下となっていますが、昨年度は目標収量に届きませんでした。今回の実証ほ場での作業では、計画施肥量312kgに対して実績が310kgと、ほぼ99%の高い精度で施肥されていることがわかりました。今後、大規模経営やほ場整備に伴う生育ムラが、経営に与える影響に対して、KSAS+PF(可変施肥)田植機の活用によって生育ムラを抑えて、経営的にプラスの効果に結びつけていきたいと考えています。

可変施肥技術導入のポイント

●農家の高齢化等により担い手への農地集積、規模の拡大が進んでいます。規模が拡大する中で、収量・品質を向上、安定化させることは、経営の大きな課題です。ほ場の枚数が増える中で、ほ場ごとの収量・品質に応じた施肥設計やほ場内の生育ムラに応じた可変施肥は収量・品質の安定化や化学肥料の削減にもつながります。
●ほ場整備や畔抜きによる大きな区画のほ場を有する経営には特に有効です。

■KSASを活用した可変施肥

可変施肥とは

「可変施肥」とは施肥量を変えることができる技術、つまり「ほ場1枚の中」で、生育ムラが考えられるエリアに対して、施肥量の「増肥・減肥」ができる技術のことです。これにより、ほ場内の生育のバラつきを抑え、品質や収量の向上に役立てることができます。

KSASで可変施肥マップが作成できます!

KSASを利用することで、ほ場内のどこにどれだけの肥料を散布するかを設定する「可変施肥マップ」が作成できます。メッシュ状の詳細な「可変施肥マップ」を可変施肥対応の機械と連動させることで、マップ通りの施肥量を調整し、最適な施肥をすることが可能です。

■KSAS「可変施肥マップ」
生育ムラポイントに対して施肥量の「増・減」ができる

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