令和2年3月に策定された、「食料・農業・農村基本計画」において、令和12年の生産努力目標は、小麦108万トン、大麦・はだか麦23万トンと設定されています。国内産麦は、消費者の国産思考の高まりを受け、近年需要が供給を上回る傾向が見られ、麦生産は今注目されている作物です。
三重県の麦の作付けは徐々に増加し、令和3年産の作付は7,000haを超えるとともに、「あやひかり」や「さとのそら」「ニシノカオリ」などへの品種転換、排水対策の徹底や暖冬の影響もあり県平均単収が300kg/10aを超えるようになってきました。
しかし、播種期や収穫時の降雨の影響を受けやすい麦作にとって、いかに迅速に適期作業できる機械や人を確保するかが課題となっています。
三重県桑名市で、稲、麦、大豆のブロックローテーションで土地利用型経営を行っている、丹羽トラクター様と、スズキファーム様は、地域農業を支える大規模担い手組織です。それぞれの経営体では、効率・高生産を図るため、スマート農業を導入しています。今回のレポートでは、スマート農業を活用した麦生産に着目し、2つの経営体にお話をお伺いしました。
お客様の声
効率的な作業の実現にはスマート農業が必要
生産コスト削減を図り、さらなる規模拡大を目指す
KSASの導入でほ場の見える化で指示が楽に
稲、麦、大豆の輪作体系の中で、作期分散を図りながら経営を行っています。毎年約5ha程度規模が拡大していて、今いる従業員数では限界が近づいてきています。いかに作業を効率化していくかが求められており、スマート農業を経営の中に取り入れることで、効率化を図っています。その中で、KSASを導入していて、息子世代が中心となって活用しています。県をまたいでの管理をしているため、ほ場の枚数も莫大で、分散しています。KSASの電子マップを活用すれば、ひと目で作業してほしいほ場の場所がわかるため、管理や指示が楽になりました。
自動操舵補助システムの導入で忙しい時期の人手不足解消
麦の播種作業は、大豆跡になると正月まで続く場合があります。少しでも効率化を図るため、麦播種の前に額縁と、ほ場内明きょの施工をトプコン製の自動操舵補助システムを装着したトラクタで行っています。今まで、2人1組で、旗を立てて測量しながら作業を行っていました。自動操舵補助システムを活用することで測量の人的ミスがなくなり、1人で精密な溝掘り作業が行えるようになり、忙しい時期には大きなメリットになりました。
農業用ドローンによる適期防除で作物の品質向上
農業用ドローンを昨年の9月に導入しました。今年、麦の赤カビ防除では農業用ドローンを使用したのですが、委託の無人ヘリ防除に比べ、適期に住宅近隣の防除もでき楽になりました。近年、水稲ではカメムシが大量発生して、委託防除では適期を逃し、被害粒が多発しています。今後は農業用ドローンを駆使して、適剤・適期散布の検討を重ね、安定的な良質米生産を図っていきたいと考えています。
次世代につなぐ農業の実現へ
コロナ渦に入ってから直売している業務用米が売れなくなりました。米価も下がっていく中で、少しでも利益を上げるためには生産コストを削減していく必要があります。V溝乾田直播の導入やドローン直播の試験栽培など、経営体にあった技術を模索しながらコスト削減を図っています。地域の先導的役割として、積極的にスマート農業や低コスト技術を駆使し、息子や孫の代まで安心して続けていける経営体を目指します。
お客様の声
スマート農機の導入で、的確に作業が行え、
時間にも余裕が生まれてきた!
省力的な麦の播種作業工程
稲、麦、大豆の2年3作の輪作を行なっており、水稲は主食用米の他に、長島地区の生産者で立ち上げた「みらい耕社」で、WCS用稲にも取り組んでいます。この地域は砂壌土で排水性も良く畑作に適しており、麦作については、ここ数年は天候にも恵まれ、暗きょ無しでも安定した収量を上げています。麦の品種は小麦「さとのそら」で、播種作業を、稲跡は11月上旬から、大豆跡は12月上旬から行っています。事前に耕すと雨後にほ場の乾きが遅くなるため、稲跡については基本、不耕起です。播種前に溝堀機で、額縁とほ場内明きょを施工し、その溝に沿って、培土板を付けたスリップローラーシーダで播種しています。
自動操舵補助システムを導入し明きょ作業を効率化
作業の効率化を図るために導入したのが、トプコン社の自動操舵補助システムです。55馬力のトラクタに装着して、播種前の溝堀作業で使用しています。ほ場内の明きょは20m間隔に溝を掘っていくため、今までは、2〜3人の体制で、メジャーで測り、旗を立て作業を行っていました。その作業では、労働力の割に、かなり時間のロスがありました。それが自動操舵のおかげで明きょ間隔や、直進の精度が上がり、しかも効率よく1人で全部できるんですから、すごく省力になったと感じています。
自動操舵によるオペレータの疲労軽減
自動操舵を使っての作業は、視野の範囲が広くなります。今までは、運転に集中して前をじっと見ていたのが、肩の力も抜けて楽に見てる感覚で疲れません。スマート農機については、直進キープ機能付田植機NW8Sも導入しており、今年は雨が多く、風の強い中でも、GPSを使って真っすぐ走れました。しかも、後ろも振り返り、作業跡を確認できるのがいいです。
スマート農業で若い人にも魅力的な農業に
今、農家の高齢化が進んで、全面での作業受託が増えてきています。オペレータが父と私の2人で、作業の効率化を図るには機械化しかありません。スマート農機を導入したことで、作業が的確に行え、しかも作業時間が短縮できるようになりました。時間に余裕ができ、土日を休みにしようかなど、サラリーマン的な感じになってきました。農業もそのように変わっていかないと、若い人は農業をやりません。自動操舵やGS田植機、農業用ドローンのような新しい機械があれば、農業は変わっていくと思います。