㈱コメリと㈱東海近畿クボタがタッグを組み、地域に普及できる省力・低コスト技術として、農業用ドローンによる直播栽培の取組みが三重県いなべ市で行われています。本取組みでは、発芽苗立ちの安定化のため、酸素発生剤カルパーとべんモリ(べんがら、モリブデン化合物、ポリビニアルアルコールの混合資材)を組み合わせてコーティングした種籾を使用し、農業用ドローンによる散播を実証しています。
地域の担い手である㈱わくわく農園様は昨年より取組みを開始。50aで行った試験導入が良い成績を収めた事で、今年、直播の規模を2haまで拡大、継続して取り組くんでいます。また、昨年のわくわく農園様の結果を受けて、同じく地域の担い手であるライスボーイ水谷様も試験導入を開始するなど、関心が高まっています。
今回のレポートでは、地域を背負っていく担い手経営体が挑む、農業用ドローンの直播栽培の魅力をお伺いしました。
お客様の声
農業用ドローン直播はすごく楽!順調にいけば今後は取組面積を増やしたい
日々試行錯誤しながら経営を行っています
就農前は、東京で会社員をしていたのですが、農業に興味を持ち10年前に父の実家がある三重県いなべ市で就農しました。最初は50aの田んぼから始めた経営は、地域の方と連携を行っていくうちに、現在では約70haまで規模が拡大しています。
10年農業をしていますが、経営に関してはまだまだ課題だらけです。最近では米価が下がり資材費が高騰し、利益を上げるため、いかに省力・低コスト化を図れるか日々試行錯誤しながら経営を行っています。
育苗をやりたくなくなるほど、ドローン直播は楽です
農業用ドローンでの直播は、コメリの政木さんから提案を受けました。育苗ハウスの回転がギリギリになってきて、育苗を行わない、省力・低コスト化が図れる技術として可能性を感じ、昨年(2021年)から取り組んでいます。
実際に取組みを行い「ドローン直播はとても楽」という印象を大きく感じました。播種作業はドローンを飛ばすだけで、田植機よりも作業時間が短縮でき、なおかつ、その後の管理は普通移植と変わらないので、特別な管理はいりません。
6月くらいからは他のほ場と変わらないくらいに生育をし、収量は普通移植と比べて半俵ほど落ちましたが、許容範囲だと感じています。
また、うちは中山間地域で、田植機が入り辛いほ場が多くあるため、ドローンで上空から播種できるのはとても助かります。技術を確立できれば、ゆくゆくは10ha以上ドローン直播に切り替えたいです。
「今やろう!」でできる、それが農業用ドローン
近年、温暖化の影響でカメムシやウンカなどの病害虫が増えてきており、今まで防除を必要としなかったほ場も防除をしなくてはいけない状況に変わってきています。うちは小さいほ場も多く、ハイクリブームが入れないほ場の防除を考えたときに、農業用ドローンMG-1SAKを導入しました。農業用ドローンは「今やろう!」と思い立った時にすぐにドローンを車に積み込んで、道路状況を気にせず色々な地区に行って作業ができるので、適期散布を逃しません。予備のバッテリーと発電機も一緒に積み込んで行き、1日で10ha程度は余裕で作業ができます。今では、防除はハイクリブームより農業用ドローンのほうが稼働率が高いです。
地域に信頼される農業者を目指します
「いなべ地域で一番の農家になりたい」それが農業を始めた時からの目標です。少子・高齢化が進む中、耕作放棄地を作らないために、誰かが地域を守っていかないといけません。耕作放棄地が増えると、荒廃感が出て活気がなくなってしまいます。それは農業をしている以上は寂しいので、地域の景観は私達が守っていきたい。そのために、色々な挑戦を率先していって、地域で最初に名前が挙がって頼ってもらえる農家になりたいです。
お客様の声
作業時間が圧倒的に短縮されてとても効率的です
現在約50haを5名で作業を行っています。これから、地域の方が離農して、うちの請負面積が増えると、今の状況ではいずれ限界がくると考えています。
コメリの政木さんの薦めで、昨年わくわく農園の若宮さんが農業用ドローンによる直播をされていたのを見せてもらいました。心配だった雑草も無く、とても結果が良かったので、今年うちでもドローンによる直播の試験を決めました。
4月25日に保有機のT20Kでドローン直播を行いました。今年は30aの播種を行ったのですが、飛ばすだけだと、約10分で作業が終わったのでとても効率的だと感じました。あとは、この先の管理で雑草の問題をクリアして収量もある程度獲れれば良いかなと考えています。
現在19歳で昨年より後継者として就農しました。父が地域から頼られる農業者の1人で、その背中を目標にしています。今やっている面積をしっかり一人でこなせるようになって、将来は周りから信頼される農業者になりたいです。
関係者の声
新しい技術に合わせた資材の提案を行います
農業用ドローンの普及は、まだまだ先だと考えていたのですが、近年省力化や補助制度の関係もありドローンを導入する農家が急激に増えました。そんな中、新潟県で開催されたクボタグループによる農業用ドローンの研修会に参加し、いなべ地域でもドローン直播をやってもらいたいと考え、若宮さんに声をかけました。若宮さんはとても先進的で新しいものに取り組もうとする意欲がすごい。すぐに提案に乗ってくれ、東海近畿クボタさんの協力を得て、地域でドローン直播の取り組みをスタートさせました。
コメリとしては、ドローン直播の栽培に必要な、除草剤や肥料の手配、生育の状況を確認して適期散布の見極め、栽培管理などのお手伝いをし、地域農家の皆様のお役に立てればと考えています。