大豆栽培技術の向上で、水田転換畑で単収300kgを達成! お気に入りに追加
前田仁一さん・一さんのとりくみ
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水田のフル活用・高度利用で経営の安定化と地域の活性化#05

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大豆栽培技術の向上で、水田転換畑で単収300kgを達成!

大豆栽培技術の向上で、水田転換畑で単収300kgを達成!

富山県富山市で、水稲と大豆の作付を行う前田仁一さん・一さん親子。粘土質で排水性の悪い水田転換畑でも、排水技術や栽培技術の向上で単収300kgを達成した、その秘密を伺いました。
(この記事は、平成26年12月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.30』を元に構成しています)

 


 

新しい排水技術の導入で収量アップを図る

 前田さんは別経営で2年前に就農したご子息の一さんとともに、29haの水田転換畑で水稲と転作作物の大豆を栽培していますが、圃場は粘土質で排水性が悪く、大豆栽培には不適です。
 そこで徹底して取り組むのが体系的な排水対策。地下水位を下げ畑地化するため、地表と地下の排水を促進しています。地表水の排水には、溝掘機を使い額縁状に明きょを施工。排水口に繋げ、田面に湛水した水を素早く排出しています。地下水の排出は、本暗きょに斜めにクロスするようサブソイラで弾丸暗きょを5m間隔で密に施工し、明きょに繋ぐことで排水効果を高めています。今年は㈱富山クボタの提案で、さらに条件が厳しい重粘土壌での出芽率向上を最重要課題に、穿孔暗きょ機『カットドレーン』を使い、暗きょを5m間隔で施工しました。カットドレーンは、土層をブロック状に切断し動かすことで、約70㎝までの任意の深さに12㎝四方の大きな穴を開け、その穴に切断層を通って流れる水を排出できることが大きな特長で、注目を集めています。「これまで栽培できないとあきらめていた圃場で、今年初めて大豆が出来ました」と、新しい排水技術を積極的に取り入れ、難題を解決しています。

収量・品質向上につながる技術・機械を積極的に導入し、収量300㎏を実現!

 前田さんは排水対策の他、高品質・多収のための工夫を様々行っています。まず土づくりとして行うのが、プラウを使って緑肥をすき込む反転耕。15㎝の深さに深耕し根域を拡大して、地力がアップするへアリーベッチをすき込み、地力増強に努めています。  生産性を左右する播種は、耕うんと同時にうね立てが行えるアッパーローターを使用。耕うんは1回で行い表面に細かい土を、下層に粗い土を集めるため、「排水性・通気性が向上し、出芽や初期生育が良好」と、前田さん。さらにフロントサブソイラーを装着し、出芽時の湿害は特に気を使っています。中耕・培土は「土を練らず、根を傷めることが少ない」中耕ディスクを使用し、病害虫防除はフルキャビンハイクリブームにうね間散布装置を付け、より精度の高い防除を適期に行っています。
 また、「収量アップに大きくつながる」と、話されるのが摘心。「頂芽を摘むことで側芽の成長が促され、着莢数が多くなります」。効果を上げるために、開花2週間前に大豆摘心機で摘心し「今年は着粒数が4粒ある大豆もあります」。これらの多様な収量・品質向上につながる技術や機械を導入したことで、一昨年の単収は目標に掲げていた300㎏を実現。去年は播種後の天候不順などで収量は伸び悩みましたが、県の平均単収はクリア。今年は「着莢数も多いことから、高収量が期待できるのでは」と、手応えを感じています。

今後も作り方次第で米に負けない収益が見込める大豆をつくり続けたい

 前田さんは5年前に富山クボタが主催する「大豆300A研究会」に加入し、昨年より会長に就任。現在生産者と関係機関を含め104名が参加し、新技術や機械の実証をしています。
 今年度研究会では、深層施肥播種の実証に取り組み、前田さん自身は培土作業の省力化と、収穫ロス低減を狙いに、条間36㎝、株間18㎝の狭畦栽培にチャレンジしました。「入会前の平均単収は100㎏にも届かなかったので、大豆は儲からないと思っていましたが、入会して大豆300A技術を取り入れるようになって収量が確実に上がり、収入も増えた。大豆に対する意識が変わりました。米価が下がり回復の見通しが不透明な中、稲作経営で所得を上げることは難しいと思います。しかし、大豆は作り方によっては米に引けを取らず、工夫次第で収益向上が見込める。今後、生産調整をめぐる情勢が変わっても、栽培は続けたい」。と前田さん。
 富山県の大豆の生産振興の鍵を握るのは、前田さんをはじめとする意欲的な生産者だと言っても過言ではありません。

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