せっかく土地があるのだから、おうちで野菜を育ててみたいな、と家庭菜園について調べてみたものの、「うちの庭でちゃんと野菜が育つのかな?」「土って、買ってくるもの?」「スコップで掘り返したら、畑になるかな?」など、土づくりについてよくわからない、難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
野菜を育てるには、良い土が必要です。良い土があればおいしい野菜が育つ、といっても言い過ぎではありません。
では、実際にどういうのが「良い土」なのでしょうか?また、自分の土地が「良い土」でなかったら、家庭菜園はできないのでしょうか?
この記事では「土づくり」についてご紹介します。
目次
土づくりとは、家庭菜園や農作をするのに適した土壌に整えることです。
家庭菜園に使う場所の土が、カチカチの固く締まった土ではうまく野菜が育ちません。野菜作りの第一歩は、まず、土を耕すことから始まります。
「家庭菜園なんだから、そこまで真剣に土づくりをやらなくてもいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかも知れません。
でも、どうでしょう。
野菜は、土のなかで根をはわせ、体を支え、水分や養分を吸収して育ちます。また、野菜は土の粒と粒の間にある酸素を根から取り込み、呼吸をします。
根が生えやすく、粒状で空気が入り込み、適切な養分がある土などの条件が揃っていれば、野菜は元気に育ち、病気や害虫の被害にもあいにくくなり、結果的に、収穫まで無理なく家庭菜園が楽しめるようになります。
ということは、初心者であればあるほど、「土づくり」はとっても大事だと思われます。
では、どのような土が「良い土」といえるのでしょうか。
良い土とは「水はけ」、「水もち」が良く、堆肥(たいひ)のような「有機物を多く含んでいる」土です。
粘土を多く含んだ重い土から砂のようにさらさらした感じの軽い土まで、いろいろな土がある中で、重くもなく軽くもない中間の土「壌土」が、野菜作りに比較的適した土です。
そして、土に空気をたっぷり含ませ、水はけをよくし、土壌の微生物が活動しやすい状態に耕します。
野菜作りに適した「壌土」、良い土の条件は以下の7つのポイントがあります。
「良い土」の条件はわかったとしても、実際に自分の土地の土が「良い土」なのかどうか判断するのは難しいでしょう。
そんなとき、おすすめなのが、土壌診断です。
土壌診断では、土の状態を数値化することで、栄養成分の量、バランス、pH値などの化学性を測定し、その土がどんな状態であるか、どんな肥料が必要か、などを調べることができます。
お近くのホームセンターなどで土壌診断を行っていると思いますので、問い合わせてみてください。ネットでは土壌診断キットなども販売されていますが、初心者の方はまず専門家に相談するのがベターかと思います。
実際に農家では、土壌診断を行い、また、圃場の排水性や土壌の通気性・保水性などの物理性の条件も確認した上で、土壌の改良などを行います。
家庭菜園だから、そこまで本格的にしなくても・・・と感じるかも知れませんが、いわば素人だからこそ、勘や経験もないので、きちんとした数値を測定し、土づくりを行うことは非常に大切なことではないでしょうか。
たとえば、適当に土地を耕して、畑を作って、種を植付けたのはいいけれど、結局思ったようにならなかったときの哀しさ、虚しさ、やるせなさを考えたら、自分の土地のことをちゃんと調べることは決して大げさなことではないはずです。
まず、自分の土地のことを知る。ここで新たな発見があったり、次にやるべきことが見えてくるでしょう。
野菜類の生育には炭素、酸素、水素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、イオウの9つの多量必須要素と、ホウ素、鉄、モリブデン、マンガン、亜鉛、銅、塩素、ニッケルの8つの微量必須要素などが不可欠です。
9つの多量必須要素
炭素、酸素、水素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、イオウ
8つの微量必須要素
ホウ素、鉄、モリブデン、マンガン、亜鉛、銅、塩素、ニッケル
野菜の種類ごとに、生育に好ましいpHが異なるので、適正なpHの土づくりを行います。
pH(ペーハー)
酸・アルカリの強さは、pH(ペーハー)という記号で表します。
pH7を中心に、値が小さいほど酸性の性質が強く、値が大きいほどアルカリ性の性質が強くなります。
1平方メートルの面積を10cmの深さまで耕す場合、消石灰を80~100g、または苦土石灰・有機石灰(かき殻)を100~150gを施すと、酸度が「1」上がります。
土の深さを20cmにすると、2倍の量が必要です。
石灰質肥料は、施したら、なるべく早く土と混ぜましょう。雨が降ると、石灰が固まってしまうので注意します。
鶏ふんを長年繰り返し使っていると、次第にアルカリ性に傾きます。アルカリ性になった場合には、鹿沼土の細粒かピートモスを混ぜます。
おもな作物別にpHの適正生育範囲を以下にご紹介します。土壌診断とあわせてご確認ください。
土づくりにとって、土に養分を与えるのは大切なポイントです。
野菜を健全に育てるためには、野菜が育つ土を良くすることが最も大事です。はじめての家庭菜園はもちろん、毎年野菜を育てている土も毎年劣化していきますから、良い土にしていくためには、栄養補給をしていく必要があります。
重要なポイントとして「堆肥」や「緑肥」をうまく使って土そのものを育てていきます。
堆肥(たいひ)とは、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料、あるいは土壌改良剤のことです。わら、枯草、落ち葉などの植物や、鶏ふんや牛ふんなどを堆積して発酵させたものをいいます。とくに植物性のものであれば自作することも難しくありません。
緑肥(りょくひ)とは、新鮮な緑色植物をそのまま田畑にすき込んで肥料とすることです。これに用いられる植物は「緑肥作物」といいます。 雑草も土にすき込めば緑肥になりますが、肥料としてコントロールしやすい緑肥作物を使うのが一般的です。
カチカチの土、水たまりができるような土、サラサラ過ぎる土、養分が少ない土、長年放置されている土は、堆肥や緑肥を入れることで、物理的に水はけ、水もちを改善することができます。
また堆肥や緑肥を入れることで土の中の微生物を活性化することができます。これらの微生物は地上や地中の有機物を分解します。この微生物が土の水はけ、水もちを改善してくれるのです。
堆肥や緑肥は、微生物の食料となります。土に堆肥や緑肥が入ると、微生物たちは食料が与えられるので活性化します。微生物が繁殖し、数がどんどん増えていきます。
さて、この微生物が増えることが、土づくりにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
この微生物たちが有機物を食べるときに「のり」のような分泌物を放出します。この分泌物が土の細かい粒子を固め、粒状になり、土のなかに隙間ができることで、水はけがよくなります。
また、その粒状になった土に水が付着すると表面張力によって、水もちがよくなるのです。
つまり、
①堆肥や緑肥を土に入れる→②微生物に食事が与えられ、微生物が増殖する→③微生物から分泌物が出る→④その分泌物が土の粒子を固め、粒状になる→⑤土のなかに隙間ができる→⑥隙間ができて水はけがよくなる→⑦さらに粒状の土の水の表面張力によって、水もちもよくなる
という循環が生まれます。自然の力を借りて「良い土」ができあがるのです。
さて、土づくりの重要性について基本的な情報をご紹介しましたが、では、どういうタイミングで、またどれくらいの期間で行うのかが気になります。
まず、土づくりは種や苗を植えるときまでに完了しておかなくてはなりません。
土の状態にもよりますが、一般的に土を中和させるのに1か月程度、堆肥を入れて有機分解するのに2週間程度必要といわれています。種や苗を植えるタイミングの約2か月程度前から土づくりを開始するのが適切でしょう。
土壌診断をしてみると他にも必要な作業が発生するかも知れませんので、なるべく早めに行うことをおすすめします。
良い土とは何か?土づくりとは?といったテーマについて基本的な情報をご紹介しました。
軽い気持ちで家庭菜園を始めようと思ったのに、結構、科学の授業のようで難しい、、とか、たくさんのハードルがあるな・・・などと感じている方もいらっしゃるでしょう。
たしかにちょっと学ぶ必要がありますが、土づくりをしっかりやっておけば、おいしい野菜を収穫できる第1歩となるはずです。まずは、土壌診断からスタートしてみてください。
また、本記事の内容をさらにくわしく紹介した記事はこちらです。
みんなの農業広場:農作業便利帖 野菜作りの基本「土づくり」
https://www.jeinou.com/benri/garden/basic/2009/07/151100.html
※画像提供:みんなの農業広場