2021年5月20日に、福島県喜多方市で、シンジェンタジャパン(株)が、新たに開発したコーティング済み水稲種子「リゾケア®XL(エクセル)」の、農業用ドローンによる播種のデモンストレーションが行なわれました。
※®はシンジェンタ社の登録商標です。
リゾケア®XLドローン播種の直播体系を実証
今回のリゾケア®XLドローン播種のデモンストレーションは、シンジェンタジャパン(株)の取り組みに、(株)クボタが播種機やドローンの技術で協力しているものです。新型コロナウイルス感染防止対策を徹底し、関係者のみに絞っての開催となりましたが、実際の播種の状況などを詳しく検討することができました。今後は、出芽から収穫までの状況を確認し、成果や課題を把握していくこととしています。
【実証の概略】
●実証担当法人:株式会社夢ファームむげん様(喜多方市豊川町)
●実施面積 :125a(17.5a2筆、90a1筆)
●水稲品種:天のつぶ、里山のつぶの2品種で比較
●播種量:3㎏、4㎏(いずれも乾モミ換算)の2水準で比較
●ドローン:クボタ農業用ドローンT20K、粒剤散布装置(オプション)
実証経営者の声
農地集積が見込まれる中、
育苗施設が不要なドローン直播に期待しています
株式会社夢ファームむげん様(喜多方市)
(経営概要:水稲約30ha、小麦2ha、長ネギ1ha、ソバ1ha、役員3名、社員6名)
水稲30haのうち、1.3haで、リゾケア®XLのドローンによる直播を行いました。いい収穫が迎えられるよう、今後しっかりと栽培管理していきたいと思います。
地域では、農業者が高齢化し、担い手が不足する中で、あと数年もすれば、われわれの法人が受託せざるを得ない水田が大きく増加するのではないかと見込まれます。しかし、育苗ハウスの増設はコスト面で難しいので、この直播技術をうまく活用して、経営を考えていければいいのではないかと期待を寄せています。今後は、収量確保が必要な飼料用米などにも、この直播技術を応用していきたいと考えています。
実証担当者の声
作業効率が高いドローン直播は
春作業の省力化に大きく貢献できる技術です
ドローンによる播種作業は、上空2mの高さから散播しました。開度は100%、回転数は800rpm、M+モードで、飛行速度(12km/時または13km/時)および散布重複数(2回または3回)を変更することで、播種量を調節しました。また、播種後には、同じドローンで除草剤プレキープ1キロ粒剤を散布しています。こちらは、シャッター開度25%、回転数1200rpm、速度15km/時としています。
田面が軟らかめに仕上がっていたので、播種後、種モミが土中にうまく埋没してくれました。
ドローンでの播種は、鉄まきちゃんでの播種に比べて作業性が非常に高いので、この栽培技術が確立すれば、省力化に大きく貢献するものと思います。
シンジェンタジャパン(株)担当者の声
ドローンでの播種でも安定した苗立ち
直播の課題に立ち向かう革新的な種子処理技術リゾケア®XL
リゾケア®XLは、苗立ちを安定させるための3つの成分が配合されたコーティング済の種モミです。2021年は、品種を「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」に限ったテスト販売という形ですが、各地から要望のあった品種も試験用に供給し、全国各地で実証しているところです。将来的には、この技術を10万ha程度まで普及させることを目指しています。
リゾケア®XLは、土中播種や、湛水状態での出芽が可能であるという特徴があります。重りの役割をする鉄成分も入っているので、田面の状態にあまり左右されず、ドローンでの播種でも安定した苗立ちができると期待しています、播種深さは0.5~1㎝程度が最適です。今回は、ゴルフボールを1mの高さから落として全体が沈む程度に、田面の硬さを仕上げていただいたので、0.5㎝深程度でうまく播種できました。
コーティングの手間がいらず、当該シーズン6月までであれば保存が可能なことなどの特性を活かして、水稲生産における作業性の向上に貢献していきたいと考えています。
リゾケア®XLの詳しい情報については、以下をご参考下さい。
https://www.risocare.jp/
クボタの解説
実証を通じて、クボタが培ってきた直播技術との適合を図っていきます
農業用ドローンT20Kによる播種作業時間は、計画的な操作により、1筆17.5a当たり約5分で終了しました。また、リゾケア®XLはコーティングがしっかりとしており、剥がれたり飛び散ったりということが少ないので、ドローンでの播種作業が支障なくできました。コーティング作業が省略できるので、農業者は購入した種子を播くだけです。
散播なので、水田の代かき後の水管理に注意を要します。今回は田面をちょうど良い硬さに仕上げていただきましたので、種モミは、土中に埋没させることができましたが、やや泥がかかる程度のものもありました。鳥害を防止するため、湛水状態で念入りに管理する必要があります。土壌の還元化も避けなくてはならないので、機を見て何度か落水することも必要ではなかろうかと思います。
今後、「苗立ち」がどれだけ安定するか、また倒伏の状況などにも注目し、クボタのドローンや直播機「鉄まきちゃん」との適合性を確認していきたいと思います。