乾田直播で移植・湛直以上の収量を確保 お気に入りに追加
7条刈りコンバインDR7130による収穫実演会を開催
お気に入りに追加

滋賀県では今年、全国農業システム化研究会の課題として乾田直播導入による省力・低コスト効果の検証を行っています。4月13日 に播種を行った乾田直播のほ場は、天候に恵まれ順調に生育を重ねた結果、収量は慣行栽培以上の約9俵を確保する成績となりまし た。今回のレポートでは乾田直播の実証を成功に導いたポイントを関係者にお聞きするとともに、クボタの食味・収量センサ付き7条刈りコンバインDR7130による収穫実演会の様子をレポートします。

目次

※ クリックすると該当の見出しへ自動でスクロールします。

実証担当者の声

滋賀県大津・南部農業農村振興事務所農産普及課普及指導第一係
主任技師 柴田 隆豊 様

化学合成農薬を7成分で乾田直播が行えることがわかりました

 今回の実証では、稲・麦・大豆(2年3作)の輪作が行われる地域において、汎用利用ができる播種機で乾田直播を行い、省力・低コスト化の効果検証と、作業性・収量性調査および経営的試算をする予定です。また、滋賀県で取り組んでいる「環境こだわり農産物(※)」の化学合成農薬使用量基準の7成分以下で乾田直播を行えるかを課題に、今年度全国農業システム化研究会の現地実証調査を行いました。結果として除草剤3回(農薬5成分)と病害虫防除1回(農薬2成分)の合計7成分で、雑草や病害虫を防除でき、組合の平均反収を上回る10aあたり約9俵を確保できたので、かなり手ごたえを感じています。
※環境こだわり農産物:化学合成農薬および化学肥料の使用量を慣行の5割以下に削減するとともに、濁水の流出防止など、琵琶湖をはじめとする環境への負荷を削減する技術で 生産された農産物を県が「環境こだわり農産物」として認証する制度です。

湛水直播より発芽・苗立ちが良く安定しました

 実証農家である南櫻農業生産組合では以前より、湛水直播栽培に取り組まれています。そのノウハウを活かしたこまめな水管理や除草剤散布のタイミングが功を奏しました。4月14日に播種を行った後2週間以上発芽せず、ほ場表面がカラカラに乾きクラスト状態となり、「水を一度走らせたほうが良いのでは......」と思いましたが、5月2日の発芽まで我慢が続きました。結果として良い発芽率を確保することができ乾田直播の発芽の安定性がわかりました。

9月7日にDR7130を使用して乾田直播の収穫実演会を開催

播種後10日目(4月24日)の発芽前のほ場。土壌表面が乾きひび割れている

実証で使用していた積算気温計。ヒエの発生とイネの出芽予測

入水前の乾田直播のイネ姿(5月22日)

除草剤の適期散布と均平や鎮圧による水持ち効果で雑草防除ができました

 乾田直播は播種後、イネの発芽までの除草剤散布(茎葉処理剤)のタイミングが難しく、イネが出芽してから散布するとイネが枯れ てしまい、逆にあまり早く散布すると雑草防除効果がありません。ほ場に雑草が発生し、イネが出芽する直前のタイミングを、ほ場に設置した積算気温計のデータを参考にして判断し除草剤を散布しました。このタイミングが良かったと感じています。
 また、実証を行ったほ場は砂地で比較的水が抜けやすいほ場でした。このためレーザーレベラによる均平や播種前後にケンブリッジローラで鎮圧をすることで入水後の水持ちが良くなり、6月1日に散布した初中期一発除草剤がしっかりと効果を発揮しました。実証では、環境負荷低減を行いながら乾田直播が行えることがわかりましたので、結果を踏まえながら普及・推進を行っていきたいと思います。(除草体系 4/28茎葉処理剤→5/16入水前除草剤→5/29入水→6/1初中期一発除草剤)

グレートプレーンズで播種を行ったほ場(9月7日)実収:546kg/10a

クリーンシーダで播種を行ったほ場(9月7日)実収:530kg/10a

生産者の声①

南櫻農業生産組合
組合長 山本 勇 様
[経営面積]水稲:51.6ha(移植:33.9ha、直播:17.7ha)麦、大豆:各22.0ha  

雑草対策は、ほ場の均平と播種前後の鎮圧です

 乾田直播の実証を行っているほ場は、課題であった雑草も少なく生育状態も良かったです。慣行の移植や湛直栽培と比べても良い結果なので、100点以上の出来栄えです。
 播種後は、関係者の方々と連携を取りながら丁寧な管理を徹底しました。栽培を行って良い成果が上げられたのは「播種前にレー ザーレベラで均平にしていたこと」「播種前後の鎮圧によって水持ちが良いほ場に仕上がり除草効果を均一にすることができたこと」また「適期の除草剤散布」が相まったことです。実証ほ場がある地域では雑草が繁茂しやすいほ場が多いですが、乾田直播のほ場は除草剤3回でほぼ雑草を抑えることができたと思います。

7条刈コンバインはパワーがあり楽に作業が行えます

 9月7日の収穫では、クボタの7条刈りコンバインDR7130の試乗をしました。現在保有しているコンバインと同じくらいの大きさですが、パワーがあり、キャビンも静かで快適なので、作業中も楽でした。1条分多く収穫できるのでその分早く作業が終わりました。また収量やたんぱく値、水分量などがモニタで把握できることが良い点です。水分量がわかると、収穫時にコンバインの速度調整が行えるので便利ですね。

必要な機械を導入しながら乾田直播を経営に取り入れていきたいです

 現在、普通移植と湛水直播を組み合わせながら省力化や作期分散を図って います。より効率化を図るために今回の実証の成績を鑑みながら、大きいほ場で何枚か乾田直播を取り入れていく予定です。そのために乾田直播に必要な機械の導入を進めていきたいと考えています。

▲DR7130の説明を受ける山本様

クボタ担当者の声

株式会社北陸近畿クボタ 滋賀事務所 ソリューション推進部
課長 上田 良一

ハードとソフトがうまく噛み合った乾田直播の実証になりました

 南櫻農業生産組合様は10年以上前より、省力・低コスト化を目的に鉄コーティング直播などの湛水直播を導入されています。区画整備が整っているほ場において、より効率化が図れる乾田直播にも興味を示され、全国農業システム化研究会の課題として乾田直播の実証試験を行いました。その際に北陸近畿クボタでは全国で実績を上げている不耕起汎用ドリルを含めた乾田直播に必要な機械 化体系の提案を行っています。今回の実証では、ソフトとハードがうまく噛み合った技術体系が実証できたので、これをベースにして省力・低コスト化を課題とされている生産者に向けて、実証結果を踏まえたメリットを提案することで、乾田直播に取り組まれる方が増えていくのではと感じました。

実演会では関係者へ向けてDR7130の仕様を説明

DR7130は刈り取り性能が高く乾田直播の技術にもマッチしたコンバインです

 DR7130は7条刈りですが、今回実証を行った不耕起汎用ドリルの条間19cm、クリーンシーダの条間35cmにおいても刈取・脱こく・選別性能などにも問題はなく、条間が多様な乾田直播の技術にもマッチしていると感じました。南櫻農業生産組合の山本組合長にも7条刈のDR7130に試乗いただきましたが、お持ちの6条と比較しても違和感なく、取り回しも スムーズで、旋回の回数も減らせて効率的がよく、キャビンも広々としてすぐにでも欲しいコンバインだと高評価をいただきました。

グレンタンク容量満杯2000Lを約90秒で排出

乾田直播使用機械と工程表

不耕起汎用ドリルでの乾田直播播種作業(4月14日)

クリーンシーダでの乾田直播播種作業(4月14日)

資料ダウンロード

SR20230907_滋賀県野洲市

注目の記事

“旬”なキーワード

よく一緒にみられている情報