
地域で先駆的にたまねぎの直播栽培に取り組む青森県六戸町の川村青果様で、今年、みちのくクボタのサポートのもと、クボタたまねぎ直播機を使用した春まきたまねぎの試験栽培を実施。その試験ほ場において、収穫期を迎えた8月23日、クボタたまねぎ掘取り機KOD-1による掘取り作業が行われました。掘り起こされたたまねぎは、L・2Lサイズの大玉のたまねぎに生長。収量も移植栽培と遜色ない10a当たり約4tが期待できる結果となりました。今回のレポートでは、収穫に至るまでの生育状況とともに、クボタたまねぎ直播機による直播栽培のポイントを紹介します。
生産者の声
青森県上北郡六戸町
有限会社川村青果 営業部長 川村 毅彦 様
栽培面積70ha
だいこん10ha、にんじん30ha、長いも5ha、ごぼう10ha、ばれいしょ8ha、たまねぎ7ha
生産委託60ha
だいこん50ha、長いも5ha、ごぼう5ha
高収量なたまねぎを生み出したクボタたまねぎ直播機
今年は、適度に雨が降り、病気の心配もなく、管理体制もしっかり行えたので、たまねぎの生育は順調に推移しました。クボタたまねぎ直播機は、播種の精度が高く、局所施肥の効果が活かされた機械ですので、玉揃いも規格のズレが無く、かなり安定的な規格が収穫できました。すべて収穫してみないと詳しくはわからないですが、播種した分はほとんど出荷できるので、収量は10a当たり約4tになりそうです。従来の播種機(クリーンシーダ)による平均収量が3.5tですから、500kgほど上回る見込みです。

8月23日に、青森県六戸町の川村青果ほ場で実施されたクボタたまねぎ掘取り機
KOD-1による掘取り作業

掘り取られたたまねぎ。L、2Lサイズの大玉が揃い、10a当たり約4tが期待できる状況
クボタたまねぎ直播機による出芽率は85%超
高収量の要因は出芽精度の高さです。クボタたまねぎ直播機での出芽率は約85%を確保できました。播種した際にできる溝の深さとその溝底に播種する技術は、出芽に対してかなり優位な状況を作り出しています。このおかげで、乾燥にも湿害にも強く、様々な条件に対応できたことが、高い出芽率に影響してきたのだと思います。
また、種子直下にリン酸を施用する局所施肥のおかげで、出芽からの初期生育が慣行と比べて1週間ほど伸びも早く、播種して20日ぐらいすると葉の揃いの差がはっきりとわかるようになりました。その後、順調に生育し、収穫期を迎えて掘り起こしたところ、玉揃いも規格サイズのM以上でSサイズが少なく、25a区画と35a区画の2つの試験ほ場の内、特に25a区画のほ場では、L、2Lサイズの大玉が中心で、とても満足のいく結果となりました。

クボタたまねぎ直播機による播種作業(4月18日撮影)

播種後30日のほ場。播種後10日に出芽し、85%を超える出芽率を確保した(5月18日撮影)
高品質・高収量なたまねぎ生産に貢献するクボタの野菜関連機器
今後の展開としては、面積拡大よりは、もっと玉揃いの良いたまねぎをつくれるように、そして収量を上げることに力を入れていきたいと思います。今年、初めて使用したクボタたまねぎ直播機やクボタたまねぎ掘取り機KOD-1など、みちのくクボタさんと一緒に、新しい機械による作業の効率化に取り組んでいますが、これらの機械はそのために大いに役立ってくれると思っています。今年の結果を見て、ぜひ購入も検討したいと考えています。

クボタたまねぎ掘取り機KOD-1による掘取り作業(写真は35a区ほ場)

25a区のほ場ではL・2Lサイズがほとんどを占めた

慣行播種機の収量と比べて10a当たり500kg増の4tが期待された(写真は25a区ほ場)

川村青果様の営農を機械化の面からサポートする㈱みちのくクボタ六戸店の手倉森明店長(写真左)と好成績を喜ぶ川村様
実証関係者の声

岩手県盛岡市
双日農業株式会社
取締役補佐 吉川 保 様
収穫したたまねぎの素晴らしい出来栄えに驚いています
クボタたまねぎ直播機を使用したたまねぎについて、まず腐れや傷物のたまねぎがほとんど無くて、本当に素晴らしい出来栄えのたまねぎだなと驚いております。この直播機がこれから普及して、川村青果様の栽培技術が一般的になれば、また1つ東北におけるたまねぎの産地化が進んでいくという実感を非常に強く感じました。移植たまねぎ栽培での東北における収量の目標値は、国の農業機関では、10a当たり4tが1つのベンチマークになっております。今回の実証では、約4tの収量が期待できるとのことですので、育苗のプロセスを経ずに4tがクリアできているという時点でとてもすごいことだと思っています。もっと反収の良いところもあるかもしれないですが、育苗のコスト、時間、手間全てがカットされている直播栽培ということを考えると、それ以上の意義がある取り組みだと思います。
生産者の皆様にたまねぎ生産の魅力を伝えていきたい
東北たまねぎ産地化プロジェクトにつきましては、現在、収穫並びに選別・出荷の真っ只中におりまして、なかなか来年の取り組みというところには、まだ着手できていない状況ですが、今年の夏のこの経験と知識を使って、より効率的に進められるような体制を今から少しずつ準備をしていきたいと考えています。生産者の皆様に対して、少しでも収益が向上につながり、良い形で販売できる環境を整えて、販路をしっかりと作った上で、生産者の皆様に、たまねぎが魅力のある作物であるということをお伝えしていけるようにできればと思っています。

KOD-1による掘取り作業に参加し、たまねぎの出来具合を確認する双日農業の吉川様(写真左端)

東北たまねぎの産地化に向けて川村様(写真左)と栽培技術について情報交換を行う

クボタの解説

株式会社クボタ
アグリソリューション推進部
技術顧問 菊池 昌彦
クボタたまねぎ直播機の力と不織布べたがけなど生産者の管理がマッチした成功例
東日本において、クボタたまねぎ直播機による実証を昨年から実施している中で、春まきたまねぎの直播栽培は2か所になりますが、今回の川村青果様での試験栽培は、秋まきも含めて一番良い成績結果となりました。出芽率は85%を確保し、場所によっては90%近いところもあったので、今まで私が見てきた中では最高クラスで、非常に良い出芽状況でした。
その要因の1点目は、土質が黒ボク土壌で、排水性も良く、過乾燥にもならなかったことやリン酸が効きにくい黒ボク土でもリン酸局所施肥効果で初期生育が良くなったことが大きいと思います。
2点目は、播種の前後に大雨が降らず湿害を回避できたことや除草剤散布などの管理作業もうまくいったこと。そして3点目は、不織布のべたがけ効果です。直播栽培は、15℃から20℃が出芽適温ですが、川村青果様の場合、播種時期が4月中旬で、この地域はまだまだ寒く、気温が上がりません。そこで不織布を掛けることによって、溝底の空間を保温できたことが出芽率向上の大きな要因になったのではないかと思います。

東日本でのクボタたまねぎ直播機による実証で一番良い成績を上げた川村青果様の直播栽培

クボタ不織布展張・巻取機を使用して行われた不織布のべたがけ(5月18日撮影)

たまねぎ直播機のリン酸局所施肥効果と川村青果様の高い管理技術が伴って成功につながったと話す菊池技術顧問

不織布によって、低温時にうねを保温できたことも出芽率向上の要因の一つ
■クボタたまねぎ直播機による栽培のポイント
❶黒ボク土壌での栽培を推奨いたします。
砂質土壌は乾燥の影響を受けやすく、粘質土壌では砕土性が悪くなりやすい等、土壌条件にも考慮が必要です。
❷局地的大雨や台風による大雨のリスクを伴います。
播種時期の降雨予報を確認して、播種をいつ行うか見定めてください。それによって除草剤散布のタイミングが全部変わってきます。天候予測、播種作業、除草作業、それらの組立をしっかり行うことが重要です。
❸ほ場のリン酸含有量を把握します。
ほ場の有効態リン酸量を確認して、リン酸種子直下施肥を行うかどうか確認してください。リン酸は特に幼苗期の生育に多く必要とし、リン酸が不足すると根の発達が悪く、越冬率が低下します。そこで、リン酸量が少ないほ場では、種子直下のリン酸を多くして、生育初期に吸えるようにします。

