水稲大区画ほ場で乾田直播による高精度高速作業 お気に入りに追加
アグリロボトラクタと不耕起汎用ドリルによる実演会
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4月13日に、滋賀県野洲市にてアグリロボトラクタMR1000A(有人仕様)とグレートプレーンズ不耕起汎用ドリルを使用した乾田直播の実演会が行われ、機械の汎用利用や乾田直播に関心がある生産者や関係者が実演会に参加しました。実演会は、滋賀県大津・南部農業農村振興事務所が取り組む令和5年度全国農業システム化研究会の現地実証調査の一貫で、スマート農業を活用した乾田直播の地域への導入効果について一年を通して検証します。

目次

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実証担当者の声

滋賀県大津・南部農業農村振興事務所農産普及課普及指導第一係
主任技師 柴田 隆豊 様

大区画化を見据え、地域での乾田直播の導入効果を検証します

 今回実証を行う野洲地域の平均的な区画面積は30a規模が多く、現在乾田直播の導入事例はありません。近年、滋賀県では大区画整備の動きが活発化しており、大区画ほ場での乾田直播と移植との省力性・収益性の比較を行うことで、今後の地域への導入効果を検証することが今回の実証の目的です。そのため、地域で唯一1ha規模の大区画ほ場が並ぶ南櫻農業生産組合で乾田直播の実証を行います。大区画整備を行うと、大型機械で省力的に作業ができるということを、この実証を通じて地域に普及提案していく考えです。

アグリロボトラクタはマーカが無くてもきれいに播種が行えます

 滋賀県においてもスマート農業への関心度が高く、今回の実証においてスマート農業技術を活用した乾田直播と慣行の移植との比較を行う予定で、播種作業において、不耕起汎用ドリルはアグリロボトラクタMR1000A(有人仕様)を使用しました。また、高精度な直進アシスト機能は、マーカが無くてもきれいに播種を行うことや、まっすぐな播種でその後の管理を楽に、効率的に作業できることがメリットだと感じます。乾田直播で使用する播種機は、実演機の不耕起汎用ドリルと、南櫻農業生産組合からの要望である同組合保有機のクリーンシーダによる2種類の播種方式による播種精度、省力性、収量性について比較を行います。

グレートプレーンズ 不耕起汎用ドリル

アグリテクノサーチ クリーンシーダ

環境に配慮した乾田直播の取り組みを目指します

 滋賀県は京阪神の生活を支える琵琶湖を有するため、環境保全型農業に力を入れており、化学合成農薬や化学肥料の使用を慣行の5割以下に減らすなどの取り組みを行う「環境こだわり農業」を推進しています。そこで、乾田直播の実証においても、減農薬栽培基準の使用農薬成分7成分以下を実現できるかどうかも検証する予定です。雑草が大きくなるステージに合わせて、気温などのデータに基づき除草剤の回数を減らすことが目標です。

1haのほ場を半分にわけて2種類の播種機方式で実証を行う

試験区の概要

生産者の声①

南櫻農業生産組合
組合長 山本 勇 様
[経営面積]水稲:51.6ha(移植:33.9ha、直播:17.7ha)麦、大豆:各22.0ha  

作業人数を減らせることが直播の最大のメリットです

 南櫻農業生産組合は86名の組合員で構成されていますが、組合員の大部分が兼業で農業をされている方なので平日の主な作業は7~8名程度で行っています。省力・低コスト化を図るため15、6年前から鉄コーティング直播を中心に倒伏に強いキヌヒカリで取り組んでいます。
 移植では、田植機1台に対して苗運搬や田植え補助の5人1組で作業を行っていますが、直播の場合田植機1台に対し補助を含め2人1組で作業が行えることが最大の利点です。しかしながら直播は、1枚あたりの区画面積が1haを超える大きいほ場では、代かきの均平ムラが出て雑草が繁茂したり、水管理によって苗立ちが安定しないことがありました。さらなる省力・低コスト化を図る方法を考えていた時、彦根市で乾田直播をしているという情報を得て、クボタや普及センターに相談したところ、今回の全国システム化研究会実証調査に取り組むことになりました。乾田直播は平日の人手が限られる時に、少人数で播種ができることが魅力的ですね。実証の結果を見ながらになりますが、直播をすべて乾田直播に置き換えるのではなく、将来的には従来の方法と組み合わせながら経営を行っていけたらと考えています。

設定すれば手放しでも播種が行える

まっすぐに播種が行えることはトータルでメリットがあります

アグリロボトラクタ(有人仕様)をお借りして不耕起汎用ドリルでの播種作業を体験しました。GS機能が付いた田植機を導入しているので、手放しでもまっすぐ作業ができる機能については信頼を寄せています。設定をすれば、あとはスイッチをポンと押すだけで、自動でまっすぐ播種が行えることは、オペレータにとっては楽ですね。また、条がきれいなら収穫作業が楽になるだけでなく、収穫後のスタブルカルチでの粗耕起も条を見ながらできるのでスムーズに作業が行え、トータル的にメリットを感じます。

2種類の播種機を見極めながら経営に合った方法を選択したいと思います

実証ではグレートプレーンズの不耕起汎用ドリルと手持ちのクリーンシーダ2種類の播種機の比較をお願いしました。不耕起汎用ドリルは播種精度が良く、条件が良ければ10km/hで播種することができるため、圧倒的に省力化に繋がると感じました。経営的にはできれば既存の機械を使用できることが一番良いと思うのですが、実証の中で比較を行いながら導入の方向性を決めていければと思います。

播種状況の確認を行う山本様

生産者の声②

株式会社グリーンちゅうず
代表取締役社長 薬師寺 憲一 様
[経営面積]水稲:160ha 麦、大豆:各90ha

先を見据えて低コスト稲作への情報収集を行っています

私達の会社は、地域の最後の受け皿としてお願いされた土地はとことん受け入れています。うちが請け負っているほ場は、1区画が平均17aで、ほ場枚数は1450筆になり散在しているため、集約化および区画拡大を図っていくことが現在の目標です。先のことを見据えて、省力・低コスト化を図る技術への知識を蓄積することが必要だと感じており、情報交換会には積極的に参加しています。その一環で、今回南櫻生産組合さんが地域で初めて乾田直播を実証されるということで、興味があり実演会に参加しました。

作期分散が図れ苗作りをしなくても良い乾田直播にはメリットを感じます

現在250haの耕作面積を、私含め16名で作業を行っています。水稲はすべて移植で行っているため、苗作りは8棟あるハウスを1回転半させるなど春作業はいつもスケジュールが詰まっています。そのため作期分散が図れ、苗作りを行う必要が無い乾田直播にはメリットを感じています。また、乾田直播は麦播種で使用しているクリーンシーダでも播種ができるということで導入コストが抑えられることが魅力的です。

実演会では、実証調査の概要と機械の説明が行われた

見聞した情報をメモ書きする薬師寺様

「ありがとう」の言葉がやりがいに繋がります

私は大阪から、野洲市にIターンし就農しました。この地域で農業を行う中で、担い手として農地を預かり土地を守ることで近隣の方から「ありがとう」という声をいただくと、大きなやりがいに繋がります。その上で私達は極限までコストを削減して、いかに収益を上げることができるか突き詰めることで、持続可能な農業を続けていきたいと考えています。

クボタ技術顧問の解説

株式会社クボタ アグリソリューション推進部
技術顧問 林 吉一

大規模経営における更なる省力・低コスト化を目指して

南櫻農業生産組合様は、1990〜1991年に1ha/1筆の大区画ほ場整備事業に取り組まれたのを機に集落一農場方式の生産組合を設立されました。現在、農地面積73.6haに水稲(移植、鉄コ、カルパーコーティング)、麦、大豆を作付けされています。組合設立から30年以上経過し、組合員の高齢化、後継者不足が課題となる中、更なる稲作の省力・低コスト化が可能となる乾田直播栽培の実証に取り組まれました。

不耕起用コールタが作物残渣やルートマットを切り分けながら播種を行う

大型機械体系による乾田直播の普及に期待

今回の実証では、高速の不耕起汎用ドリル(条間19cm×13条)と組合保有の麦・大豆播種利用のクリーンシーダによる乾田直播の実証を行い、移植と比較されます。これまで、滋賀県では代かきの濁水対策として乾田直播の実証を行ってきたものの、水持ちが悪く雑草問題や肥料効率が悪く普及に至っていませんでした。近年の経営の規模拡大により大型トラクタの普及でレーザーレベラ、ケンブリッジローラ、アグリロボトラクタ+不耕起汎用ドリル、乗用管理機の機械化体系による水持ちと雑草対策で乾田直播の安定栽培を確立することで、普及が期待されます。

クリーンシーダを使った播種作業

播種後にケンブリッジローラをかけることで発芽を揃え、水持ちを良くする

作業スケジュール

※ほ場条件により、13日に実演会を行い、14日に播種・鎮圧を実施

紹介動画

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