高齢化等により農業者が減少し、大規模経営体への農地集積によって、経営の大規模化、ほ場の大区画化が進む中、春の繁忙期に湛水、代かき作業を行わず省力性が高い乾田直播栽培が、注目を集めています。また、農研機構とアグリテクノ矢崎株式会社が共同開発した高速汎用施肥播種機は、従来の播種機では困難だった複数粒の高速点播を可能にするなど、機械化の面からも担い手農家の関心が高まっています。
今回は、高速汎用施肥播種機を使用して、乾田直播の試験栽培を行った関東地域の3軒の担い手農家を6月16日・17日に訪問。乾田直播に取り組む理由と最新の播種機による生育状況についてレポートします。
2年間の試験栽培を経て、
来年度は10haの本格導入を目指しています
乾田直播の取り組みは今年で2年目になります。とにかく「苗を作りたくない」と、JAほくさい大利根農機センターに相談したところ、クボタさんから乾田直播技術を紹介していただき、昨年、ほ場2枚70aを試験的に取り組みました。その結果、播種機の作業能力や作業時間において、ある程度の結果が残せたので、今年1.2haに増やして技術的な状況を見ているところです。昨年はグレートプレーンズの不耕起汎用ドリルで播種しましたが、今年はクボタさんからの提案もあり、高速汎用施肥播種機で播種を行いました。播種精度が良く、点播なので発芽後の見た目は普通移植と遜色がありません。年配の方は見た目を気にされる方が多いので、点播だと安心していただけます。
乾田直播の作業は移植より断然楽です。播種作業のスピードも早いので、移植だと1人作業では、1日で1~1.2haの作業面積ですが、乾田直播なら2~2.5haは可能です。経営に乾田直播を組み込めば6月末までかかっている春作業が5月中、遅くても6月頭に終わると思います。今年の結果も良さそうなので、来年は機械も購入して、10haに拡大してやっていこうと考えています。
県の振興センターで「スマート農業研究会」があり、副会長をしています。これからはスマート農業を導入していかないと規模拡大できません。今までのような3K(きつい・汚い・危険)が伴う農業では若い方が農業から離れ、さらに担い手不足が加速します。後継者のことを考えたスマート農機の導入や、データを活用した技術の継承を図っていければと考えています。
代かき、育苗が不要で作期分散が図れる乾田直播は魅力的です
現在育苗ハウスが飽和状態で、3年前に鉄コーティング直播を導入し、何とかハウスのやりくりをしています。ただ、鉄コは湛水直播ですので代かきが必要で、田植え作業の時期に代かきが追いつかなくなってくることがあります。そこで今年、代かきが不要で作期分散が図れる乾田直播に取り組むことにしました。作業が1 ヶ月ずれることが魅力ですよね。今年やってみて、結果が良ければ、乾田直播の面積を増やす考えです。現在、生育は良好で移植と見た目が変わりません。今回播種に使用したアグリテクノ矢崎の高速汎用施肥播種機が良かったのかなと感じています。播種したときは「本当に発芽するの?」と不安でしたが、芽がでて、見た目でわかるようになると、ちゃんと点播になっていて見た目がきれいで安心しました。
実演時に使用したアグリロボトラクタMR1000Aの自動操舵は良いですね。今年から田植機も直進キープ機能が付いた田植機にしていますが、広いほ場だとやっぱり楽ですね。後継者を育てていかなければいけないので、慣れていない方にオペレータを頼むときには今後必要な機能だと感じています。
点播はいいね!乾田直播は少人数での経営には必要な技術です
現在は家族で経営を行っていますが、30ha以上の経営面積を息子と2人で行うには限界があります。ほ場も100枚以上管理しています。効率的に作業を行うため、7年前から直播に取り組んでおり、現在は乾田直播と鉄コーティング直播、普通移植を組み合わせて育苗ハウスの省力化や、作期分散を図っています。
今回クボタさんからの提案で、点播が行える高速汎用施肥播種機で乾田直播の播種を行いました。播種した後に点播になっていることはとても良いですね。見た目や管理が楽になります。今年成功したら機械の購入と共に乾田直播の面積を拡大する予定です。
最近、目が徐々に悪くなってきていたので、以前よりも集中して運転するので、負担が大きく、疲れます。MR1000Aは直進に入るとハンドル操作が不要なので、普段よりも負担が軽減されとても楽でした。今年の1月に法人化し、新しく人を雇っていきたいと考えています。泥だらけになる作業ばかりだと農業が嫌いになってしまうので、快適に作業を行ってもらえるように新しい機械を導入していきたいと思っています。