2022年7月14日、熊本市の農事組合法人熊本すぎかみ農場にてクボタMR1000A(有人仕様)+MASCAR社グレーンドリル(W25AAI)による、大豆播種が行われました。今回の大豆の播種作業は、熊本県の熊本県県央広域本部農業普及・振興課(普及指導センター)が令和4年度全国システム化研究会の現地実証調査として「大規模営農法人における小麦、大豆栽培の省力、収量、品質改善技術の検討」を課題とする取組の一環です。
グレーンドリルを活用して麦・大豆の安定生産を実現していきたい
グレーンドリルによる高速播種作業で1日に5〜10haの作業が可能です
グレーンドリルでの大豆の播種は一昨年から行っていて、播種床づくりに少し手間をかければ播種作業時に速度を出せるので、1日に5〜10haの播種作業が可能になります。現在、法人では大型トラクタ1台で耕起とグレーンドリルの播種作業を行っているため、耕起をした後グレーンドリルに付け替えるなど、低効率だと感じています。今後、もう1台大型トラクタを導入することで、並行して耕起と播種が行えるようになれば、雨の合間を縫うような日でも効率的に作業ができるようになると感じています。
スマート農業の活用は作業や経営にとても役立ちます
忙しいときは朝早くから夜遅くまでトラクタにずっと乗っています。MR1000Aのように直進や旋回を自動で行ってくれるトラクタがあれば、長時間の作業時は疲労度が軽減されるので、とても楽になると感じます。しかも精密な播種作業も実現できるので、優れたトラクタですね。
経営の中にKSASを取り入れていて、非常に助かっています。約2000枚あるほ場を、作業毎に担当を分けているので、例えば整地が終わった後に播種をする場合、そのほ場の整地作業が終わっているか担当者に電話をしなくてもスマホで確認できるので手間が省けます。また、新しく入ってきた方にもKSASを使って指示が出せるので、大規模経営には必要なツールです。
麦・大豆の安定生産を目指したい
地力を維持するために、なるべく水稲を組み込んだ輪作体系を行いたいのですが、米価が上がらないので、水稲の作付けを少なくして、麦・大豆を主体に経営を行っています。ここ数年大豆の収量が下がっているので、実証を通じて効率の良い作業体系の確立と麦・大豆共に安定生産を行うことで、経営を安定化させていくことが今後の目標です。
機械の汎用利用で大規模経営体におけるコスト削減と、
緩効性の肥料で増収を狙います
稲・麦・大豆の輪作体系をひとつの播種機で行います
今年、熊本県が取り組む実証調査は、稲・麦・大豆の輪作体系で播種時期が違う作物を同じ機械で効率良く播種を行うことで機械導入にかかるコストを削減し、またすべての作物において安定生産を確立していくことを目標としています。
高速播種が可能なグレーンドリルで適期播種を目指します
熊本県の大豆の播種適期は7月10日前後です。その時期はまだ梅雨が明けていないことがあるため、生産者は天候とにらめっこをしながら大豆播種を行っています。適期播種が行えれば安定的に収量を確保できますが、大規模経営体では大豆の面積が大きく播種作業が追いつかない、あるいは長雨の影響で作業ができず適期播種を逃す場合があり、初期の生育不足で反収が下がっていることが問題となっています。実証調査では、6〜8km/hで播種が可能なグレーンドリルを用いて作業を行うことで作業時間の短縮を図ります。また、生育途中で緩行性肥料の追肥を行い、後半の窒素を維持することで増収を狙います。
MR1000Aで精度の高い播種作業を実現できました
今回大豆の播種作業には、アグリロボトラクタMR1000A(有人仕様)を用いて播種を行いました。自動運転機能は、設定した速度を保ちながら、きれいにまっすぐな播種を行うため、とても精度が高いと感じました。
本来なら、現地検討会などを開催して沢山の方に作業を見ていただきたかったのですが、新型コロナウイルスの感染防止の観点からなかなか大規模には開催ができません。しかしながら、生産者の方々は、新しい機械や栽培方法などには非常に関心度が高いです。実証を通して、皆様の経営に役立つ方法を検討しながら、生産者のお役に立てる情報を伝えていきたいです。
お客様の経営にあった安定多収を実現できる
農機や技術を提案し続けていきたい
高速播種にはしっかりとしたほ場準備が必要です
グレーンドリルを用いて大豆を播種する事例はあまり多くありません。しかしながら、稲・麦作で利用しているグレーンドリルを大豆に利用することによって機械の利用効率を高めることができます。しかも、高速で播種ができる利点があります。高速で播種をする際はほ場の準備をしっかりとする必要があります。排水の良いほ場を選択し、大雨による滞水を避けるため明きょなど排水対策をしっかり行ってください。また、くぼみなど水が溜まり易い箇所では出芽不良が発生しやすくなります。くぼみが目立つ場合はレベラーによるほ場の均平化が有効です。スタブルカルチあるいは、ショートディスクなどで粗起しを行い、麦跡であれば麦稈をできるだけ土に埋没させます。その後、バーチカルハローで表層を細かくし、鎮圧をかけることで、高速でも播種深を安定させることができます。
また、アグリロボトラクタMR1000Aを用いることで条をまっすぐ、条間が揃った播種が行えます。大豆栽培において、条がまっすぐ条間が揃ったほ場では中間管理作業(中耕培土、除草作業)を効率よく行えるようになるため、MR1000Aを使用した大豆の播種作業はメリットが大きいです。
大豆の増収に繋げる機械化や技術提案を行っていきたい
食料・農業・農村基本計画の中で品目ごとに掲げられている目標収量について、麦では目標に近づいていますが、大豆の収量は上がらず、目標を達成するには厳しい状況にあります。何も対策をしなければ収量は上がっていきません。排水対策、土づくりにも、もう少し手をかけていただき、収量向上、ひいては収益向上に繋げていただきたいと思います。規模拡大が進む中、限られた労力、農機で効率的な作業を行っていただけるよう、クボタとしてお客様の経営に合わせたベストな栽培法を提案し、適期の適切な作業を通じた安定多収を目指していただく活動を続けていきます。