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岡山県真庭市 農事組合法人 寄江原
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スマート農業実証プロジェクト 現地レポート

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「スマート鉄コーテイング直播」は順調!  ほ場水管理システムWATARAS活用で発芽率80%超を確保

「スマート鉄コーテイング直播」は順調!  ほ場水管理システムWATARAS活用で発芽率80%超を確保

中山間地域でのスマート農業技術の確立を目指し、スマート農業実証プロジェクトに参画する農事組合法人寄江原様。実証の一環として、水稲作業の省力化を図るため、スマート農機を活用する進化した鉄コーティング直播(以下鉄コ直播)に取り組んでいます。直進キープ機能付田植機NW6Sでの播種作業から約2ヶ月を経た7月28日、鉄コ直播の実証ほ場を再訪すると、そこには、移植ほ場と遜色ない鉄コ直播ほ場が目に飛び込んできました。今回は、ほ場水管理システムWATARASによる水管理のメリットと播種から中干し時期までの生育状況をレポートするとともに、真庭市が地元の生産者を対象に開催した第1回スマート農業塾も紹介します。

 


 

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鉄コ直播は欠株なしで順調に生育
WATARASによる水管理、農業用ドローンでの除草剤散布で大きな成果

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 播種後は、天候が不順だったので少し心配でしたが、普及センターやクボタさんと相談しながら管理したので、生育的には良い状況です。特に発芽が問題なかったのが大きいですね。発芽率が8割超えたので、6粒播いて、1粒出なかったかなというレベルですから、そこそこの成果が出たと思います。WATARASでの水管理は基本的には成功したと思います。今年は梅雨が長く続いていますが、降雨の際にはWATARASの管理画面にほ場状態が表示されるので、迅速かつ臨機応変に対応が行えました。
 また昨年から除草剤散布は農業用ドローンを使用して散布を行っています。農業用ドローンは必要な時期にすぐに作業が行えるので、適期散布が可能となり、除草面でもしっかりと効果が発揮されました。また、天候不順の影響で、病害虫の発生が予想されましたので、ドローンによる防除の受託作業も多く請け負っています。ドローンは地域に貢献できるスマート機械としても大きな成果を上げています。これからは、ウンカが大量に発生していると聞いていますので、ウンカに注意して見守りながら、的確な防除や水管理の指示を出して、順調な生育を維持していきたいと思います。

スマート農業でより人が集まる寄江原へ

 スマート農業実証プロジェクトを通じて、様々な人々との交流が拡がっています。視察等の問い合わせも何件か頂いていますが、新型コロナウイルスの影響は大きく、なかなかお会いすることは叶いません。しかしながら、収束後は再度多方面からのアクセスがあると思っています。スマート農業実証プロジェクトを通じて、まさに人が集まる寄江原にしていきたいです。

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スマート農業で拡がる交流
鉄コ直播に興味をもった小学生を現地検討会に招待

米農家になって美味しいお米をラクに作れるようにしたい!

 真庭市が主催したスマート農業塾の現地検討会で、大人の生産者に交じり、熱心にスマート農機を見つめていたのは、真庭市の小学4年生、木村友徳くん。寄江原の実証が掲載された雑誌を見て、「鉄コ直播について教えてください」と手紙を矢萩組合長に送ったことから、現地検討会に招待されました。

 矢萩組合長は、「小学生から手紙をもらって少しびっくりしましたが、熱意ある内容に感銘を受け、すぐに返事を書きました。今日は、鉄コ直播の説明や、実際のほ場で、播種作業に使ったICT田植機やWATARASを見てもらいましたが、話をすると、小学生とは思えない農業知識でした」と驚いたそうです。

 友徳くんは家が農家で、中学生になるお兄さんも農業が大好きで、その影響を受け、自分も農業の専門誌を読むなど勉強するようになったとのこと。「今、気になっているのは労力や栽培に掛かるお金を減らすことができる直播技術です。寄江原さんの記事を見たときに、直播技術の一つである鉄コ直播に取り組んでいることが書いてあって、どういった技術なのか知りたくて手紙を出しました。今日は、鉄コ直播のメリットや解説動画を見たり、機械(WATARAS)で田んぼに水を入れていることなど、疑問に思ったことは教えてもらい、とても勉強になりました」と友徳くん。将来は、「米農家になって美味しいお米をラクに作れるようにしたいです!」と夢を語ります。
 矢萩組合長は、「これからも色々なことを吸収して、自分だけで終わらせず、みんなに農業の魅力を伝えていって欲しい」と友徳くんを応援します。 今日の寄江原での経験は、本からは学べない貴重な経験になりました。

WATARASで水位・水温をリアルタイムに把握
先手を打つ水管理が鉄コ直播成功の秘訣

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 スマート農業実証プロジェクトが昨年からスタートして、今年2年目を迎えるにあたって、鉄コ直播の実証も、昨年のPFコンバインで測った収量や食味値等のデータを基に、良かった点や問題点を分析。ほ場条件や施肥設計を改善して、面積も昨年の20aから1haに拡大して取り組んでいます。鉄コ直播は、播種後の水管理がとても大事なので、特に今年は、WATARASによる精密な水管理で、発芽率を上げることをテーマにしました。まず、ハローによる土寄せで均平を取り、排水側のWATARASまで水が流れるように勾配を付け、周りに額縁明きょも施工し、ほ場の改善を徹底してやりました。

 WATARASのいちばんのメリットは、ほ場の水位、水温がリアルタイムに把握できるという点です。「何時何分で水位が2cmです」、「今、雨が降ってきたので5cm溜まってるよ」とかわかるんです。しかもそれが家に居てパソコンやスマホの画面で確認できる。例えば、私が岡山の会社にいても、パソコン画面でほ場の状況を組合の方と共有でき、ほ場に行く前に、「水位が高いので水を抜きましょう」などと話ができるわけです。ほ場の水位と天気予報を見て、後手後手じゃなく、先手を打って水管理ができました。今回、発芽率が8割を確保できたと聞いていますが、発芽率を上げるためにWATARASは大きく貢献したと思います。

目標の600kg/10aも視野に入るほどの手応えを感じています

 7月28日の生育調査では、隣接する密播移植のほ場と比べて、生育がほぼ追いついたという感じです。よく見たら直播の方が根っこが太いですね。このままいけば収穫も移植と変わらない時期に作業できそうです。今年の目標は600kg目指していますが、今のところは、100点あげてもいいかなというくらい手応えを感じています。今年は、課題だった雑草対策も、農業用ドローンによる除草剤散布でうまく抑えることができています。57aの大きいほ場も草がなく、発芽・苗立ちも良好、まさにお手本と言えるほどの結果となっています。たぶん組合の皆さんも、視察に来られる農家の方も、この直播を見て、これなら自分たちもやりたいなという人が増えるんじゃないかなと期待しています。

クボタ技術顧問による解説

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暖地で発芽・苗立ち率を高めるためには、
種子が吸水した後に落水管理を徹底することが重要です

 今年は、ハローを使ってほ場を均平に仕上げたことや額縁明きょの効果で、発芽時期の水管理が均一にでき、非常に良い状態で管理ができました。昨年も発芽・苗立ちは良好でしたが、今年はさらに良く、8割以上の発芽・苗立ちを確保でき、欠株のない苗立ちが得られました。
 播種後の入水では4日後には自然減水で落水状態となるようにします。昨年のWATARASの日減水深データから入水深を決めました。3日間の湛水で、籾が吸水するとともに、除草剤の処理層が形成されます。暖地での鉄コは、この発芽・苗立ち時の落水を徹底することが重要です。寒冷地ですと、しばらく浅水で管理する場合もありますが、暖地では水があると色々と弊害が生まれます。温度が高くなると水生生物が活動して、水中の酸素を奪ったり、種子がピシウム菌などに侵されたり、虫が動き回って籾に土がかかるなど、発芽・苗立ちに大きな影響をあたえます。「種子が給水したらあとは水をしっかり落とす」このことが、暖地で発芽・苗立ちを促進させるための大きなポイントです。そのためには、落水管理でも安定した効果が得られる除草剤を選ぶ必要があります。

   次の管理のポイントは、中干しで茎数をコントロールし、増えすぎないようにすることです。本当でしたら、そろそろ中干しが終わるタイミングですが、残念ながら今年は雨が続き、ここ1週間ほど落水管理にしていても実際には湛水状態になっていました。これから雨が上がれば、2〜3日は中干しのような状態を維持して、土の還元状態を緩和しながら、根がしっかりと深く入る状態を作って土台を築く管理を考えています。

夏場の水管理は、土の湿り気を維持して水を貯めない飽水管理

 中干し後は、暑さ対策の水管理です。これまでの間断かん水から、飽水管理という、いわゆる足跡水と言われる土の湿り気を維持して水を溜めない管理をしていく予定です。細かい管理になるので、WATARASで2日〜3日間隔で、水を走らせて奥まで行き渡らせる。行き渡ったら止めて落とす。土に水をさっと吸わせて湛水しない管理を繰り返す。このような管理は人にはなかなかできません。WATARASの実力の見せ所だと思います。
 飽水管理をすることで、田面からの気化熱でほ場を冷やすことができます。冷水でかけ流しができる場所は限られているので、そうではない場所ではベストな水管理だと思います。土の中に酸素も入りやすくなるので、夏場から成熟期に向けて、根の活力を維持することで、目標である収量600Kgを確保していきたいと思います。

真庭市の生産者に向けたスマート農業技術の勉強会
第1回真庭市スマート農業塾 開催

 真庭市は、スマート農業実証プロジェクトに取り組む中、7月28日に新たな企画として、第1回真庭市スマート農業塾を開催しました。真庭市では、参加者を市内の農家だけに限定。「スマート農業塾」の名称の通り、スマート農業に興味があり、勉強したい方に参加していただき、講習会と合わせて実演試乗会を実施。実際に、スマート農機を体感していただくことで、メリットもデメリットも含めて、スマート農業をより深く理解してもらうことを目的にしました。「スマート農業塾」は毎回テーマを設定して全4回を計画しており、第1回目は、自動操舵トラクタとラジコン草刈機をテーマに、約30名の生産者と約20名の関係者が参加して行われました。

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