10月6日、岩手県農業研究センターが令和4年度の全国農業システム化研究会の現地実証ほ場として取り組んでいる「アグリロボ田植機による鉄コーティング湛水直播及び可変施肥技術の実証」において、アグリロボコンバインDR6130Aによる収穫作業が行われました。
本実証では、岩手のブランド米「銀河のしずく」の省力・高品質生産技術の実現を目指しています。鉄コーティング直播(以下鉄コ直播)のアグリロボ無人機での播種による超省力化と、ドローンによるセンシングや可変施肥による生育・収量の均一化や肥料使用量の低減を組み合わせて検証しました。
実証担当者の声
岩手県独自ブランド米「銀河のしずく」の安定生産を目指します
思い切った省力化を図り、適期作業を可能にする無人鉄コ直播の実証を行っています
岩手県では現在、水田の基盤整備事業が進んでいます。その中で担い手への農地集積も加速しており、経営体あたりの栽培面積が増えているため、きめ細かい栽培管理が難しくなっていることが実態です。現在、県産米の一等米比率は全国でも上位に位置していますが、生産構造が変化する中で品質を維持しながら、効率的な作業を行うことがますます重要になっています。これらの困難な課題に対処すべく、低コスト栽培技術とスマート農業を組み合わせた実証実験を行っています。
「銀河のしずく」は直播栽培への適応性が高い品種です
県の水稲湛水直播栽培面積は約1,000ha(令和3年)あり、その約8割が鉄コ直播です。直播に取り組む農業者の多くは、経営規模の拡大にともなう作業分散を目的としており、取組面積自体は他県に比べると多くはないですが、経営体当たりの導入面積は年々増加傾向にあります。直播の栽培品種は主食用米では「ひとめぼれ」や「あきたこまち」が多いのですが、熟期の早晩や耐倒伏性の点から、多くの農業者が収量の安定性を課題に挙げています。
そこで、本実証では、直播栽培でも苗立ちが良好であり、耐倒伏性・収量性も高いことが特徴である新たな良食味銘柄米品種「銀河のしずく」を用いて実証を行っています。この品種は穂いもちほ場抵抗性を有しており、穂いもち防除を省略することも可能ですので、省力・低コスト化に加え、農薬使用回数の低減も期待でき、推進中の"みどりの食料システム戦略"の目標実現にも貢献できる品種だと考えています。
安定した収量・品質の確保をのために可変施肥の実証も合わせて実施
「銀河のしずく」は市場において高い評価をいただいており、今後も作付けが拡大していく見込みです。同時に実需者からは高品質米を安定供給することが強く求められています。
実証区では、昨年の収穫時に取得した食味・収量メッシュマップデータを基に施肥計画を立て可変施肥を行うことで、収量と品質の安定化を図る狙いがあります。また、直播はちょっとした施肥の過不足で生育に差がでるため、可変施肥を上手く活用することで直播でも安定した収量・品質の確保につながるものと考えます。
経営体にあった機械や技術を検証し提案していきます
スマート農業技術は、敷居が高いと感じている農業者が多くいらっしゃいます。費用対効果の分析を行い、適正な導入規模や、効果的な運用方法などの導入条件を明らかにしていくことが、普及を図る上で大きなポイントになると考えます。技術を上手に活用することで、経営の改善に役立て、さらには県産米の品質アップと評価向上につながることを期待しています。
実証担当者の声
可変施肥で鉄コ直播の収量ベースアップと品質安定化を図る
地域の課題に対応した直播技術を検証します
担い手不足により農地が集積し経営が大規模化する中、いかに省力・低コスト化を図っていくかが地域の課題となっています。人手不足の解消や低コスト化を実現する解決方法として直播技術の導入を検討する生産者に向け、スマート農業で行う鉄コ直播の実証を行っています。
可変施肥の実施で直播栽培の安定生産が期待できます
直播は収量ベースが低いことが懸念されているため、実証区では前年度のほ場毎の収量データを基にした可変施肥を行い収量ベースのアップを図りました。
具体的には前年の収穫時に食味・収量コンバインでメッシュマップを作成、今春マップを基にした「可変施肥マップ」を作成し、実証区(可変施肥)は平均6.58㎏/10a(6.4~8㎏の範囲で可変、約7%減肥)、慣行区(均一施肥)は7.04㎏/10aの窒素成分をアグリロボ田植機NW8SAにて施肥しました。使用している「銀河のしずく」は倒伏しづらい多収品種であるため、昨年反収が少なかった部分にピンポイントで施肥を行っても倒伏せず収量を確保できると考えています。可変施肥を行った実証区で減肥しても、慣行区と同等の収量・品質を確保できるかの検証をしています。
移植と遜色の無い生育で収穫を迎えました
播種後、水管理で少し気を遣うところはありましたが出芽揃いは良く、初期生育も順調でした。生育初期の低温や、その後の藻類の多発があり、初期生育に影響がありましたが、移植と遜色なく生育し、今日の収穫を迎えました。今回アグリロボDR6130Aで収穫作業を行いましたが、自動運転機能がついた6条のコンバインはスピードも早く、非常に良い性能だと感じました。今回のように基盤整備された水田で活用すれば、作業性が向上し省力化・効率化が図れるため、大規模に経営している農業者にはおすすめできるのではないかと思います。
クボタ担当者の声
実証で使用したスマート農機について
アグリロボ田植機NW8SAによる鉄コ播種について
播種作業は、アグリロボ田植機NW8SA(無人仕様)を使用して鉄コ直播を行いました。自動運転を活用することで人手不足を解消し、直播と組み合わせることで苗補給の労力をなくすことが可能です。さらに今回の実証では可変施肥を行っています。可変施肥を行うことで無駄な肥料を削減することができ、高騰する資材費のコストダウンを図ることができ、またみどりの食料システム戦略にも貢献しながら、収量・品質向上を実現したいと考えます。
アグリロボコンバインDR6130Aについて
収穫はアグリロボコンバインDR6130Aで作業を行いました。アグリロボ田植機とは違い、人が乗った状態で自動運転をアシストするコンバインです。今回の作業では外周3周をオペレータによる操作で行い、ほ場マップを作成してから自動運転を行いました。車速制御ができるため、自動で稲の状態に合わせた速度での収穫が可能です。また自動運転で作業を行うため誰でも簡単にベテラン並みの「匠刈り」が行えます。
お客様の営農に役立つ機械を提案していきます
銀河のしずくを使用した鉄コ直播はあまり事例が無いため、せっかく実証するのであれば、超省力・軽労化が図れる、スマート農業を活用した実証を提案し、2年前より取り組んでまいりました。
担い手に農地が集積するなかで、規模拡大の影響で時間やハウスが足りなくなり、苗作りが難しくなった生産者様におすすめしていく技術として、スマート農業を活用した鉄コ直播がとても適していると思います。