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高温・ウンカ発生の影響を受けながらも 550kg/10aの収量を上げたスマート鉄コ

最新技術実証2020/12/28

スマート農業加速化実証プロジェクト

岡山県

スマート農業実証プロジェクト 現地レポート

岡山県真庭市(農)寄江原 集落営農法人における持続可能な中山間地域営農体系の実証 SDGs未来杜市・真庭スマート農業オープンラボ

〜高温・ウンカ発生の影響を受けながらも 550kg/10aの収量を上げたスマート鉄コ〜

高温・ウンカ発生の影響を受けながらも 550kg/10aの収量を上げたスマート鉄コ

中山間地域における集落営農を次世代に引き継ぐため、2019年度から2年間の計画で、国のスマート農業実証プロジェクトに挑む真庭市。クボタでは、コンソーシアムの取組みを取材すると同時に、重労働な育苗作業を省力化でき、作期分散効果で作業の効率化が図れる鉄コーティング(以下鉄コ)直播のスマート化実証に着目。年間を通じて現地レポートを続けてきました。今回は、10月7日、そのスマート鉄コの収穫日に合わせて、実証農場である農事組合法人寄江原を訪問。今年度の実証結果をレポートするとともに、スマート農業の実証に取り組まれた関係者の皆様に、約2年間の実証を通じて、成果と今後の展望についてお聞きしました。

刈取りながら食味・収量センサ付コンバインでデータを収集

 春先は天候に恵まれたものの、7月に低温寡照多雨、8月の高温、ウンカの発生と様々な生育阻害要因に見舞われた今年度の実証。しかしながら収穫期を迎えた鉄コ直播の稲姿は、ほ場内部に数か所ウンカの影響がうかがえるものの、しっかりと実った稲穂が垂れ下がり、期待の高まるほ場でした。収獲前には、ドローンを利活用して風圧で朝露を払い、作業開始時間を早める試みも行われ、その後、関係者が見守る中、食味・収量コンバインを使ってついに収穫作業がスタート。刈りながらほ場1枚当たりの収量、タンパク含有率、水分率を計測、次年度のためのデータを収集しました。

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レベルアップした移植栽培を上回る! 鉄コで550kg/10aを実現

 組合は素人集団のため地域の農家にも劣る収量でしたが、スマート農業への取り組みを通してレベルアップが図られ、昨年は密播移植栽培を中心に地域の平均を大きく上回る実績を上げました。今年は作柄が悪い中で、組合全体で昨年を上回る収量を確保することができ、鉄コは、その移植栽培を上回る550Kg/10aを上げることができました。また、寄江原が過去に失敗した鉄コ直播が成功した要因について、真庭市普及指導センターでは、 実証で使用した直進キープ機能付田植機(NW6S)の精度の高い播種と溝切機能、WATARASによるきめ細かな水管理、効果の高い除草剤の開発等を挙げています。寄江原では、この結果を受け、鉄コを経営の軸として本格的に導入するとともに、地域農家への波及を図っていく予定です。

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実証農場の声
スマート鉄コを経営の軸に!
「絶対成功させる」と全員一丸となって取り組んだ結果です!

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高い発芽率を確保できたことで成功を確信

 私たちは、この鉄コ直播を、組合の経営の軸として、これからも続けていきたいという考えから、鉄コ専属のリーダーを設けて栽培に取り組んでいます。5月下旬から始まった今年の鉄コ直播は、天候にも恵まれたというのありますが、「鉄コ直播を成功させる」という強い気持ちが栽培にも現れ、組合員の皆さんの力がひとつになって、期待以上の発芽率を確保できました。逆にもう少し播種量を少なくしてもいいかなというぐらいです。面積も昨年の20aから1haへと大幅に広げた関係で、播種後の水管理には気を使いましたが、うまく発芽が揃い、まずはその段階では成功したと思っています。

悔しい目標未達も着実に前進、スマート鉄コの拡大・定着を目指す

 直播の課題である除草についても、実証で導入した農業用ドローンを大いに活用していこうと、ドローンによる除草剤散布を行い、その結果、播種同時と合わせて、2回で抑えることが出来ました。ドローンに対応した直播用の新しい農薬が出てきたことも大きな前進だと思っています。 今年は非常に猛暑で、かけ流しであるとか、間断かん水、飽水管理など、色々な水管理を試しながら、何とか収穫までたどり着きました。ただ、残念なことに、高温やウンカの影響は防ぎきれず、目標だった600kg/10aには少し届きませんでしたが、地域の水稲作況が95という中では十分な成果だったと思います。今後は、今年の反省点も踏まえ、水利慣行見直しなど営農条件の整備、播種時期や肥培管理、病害虫防除方法の見直しにより、スマート鉄コの拡大・定着を図っていきたいと考えています。

稼ぐ農地で取れる高品質米を生産し、ブランド化を目指したい!

 2年間の実証で、我々が当初から目標にしている「稼ぐ農地」「守る農地」については、かなりすみ分けができました。スマート農機を使って「稼ぐ農地」は生産コストを徹底的に下げていこうと、さらにKSASを活用し、収量や品質が上ることで、寄江原のお米を幅広くみなさんに食べていただけると思っています。また、独自性を出してブランド化も視野に、真庭市とも相談しながら、今後の展開を考えていきたいですね。

条件が不利な中山間地域の集落営農組織で、
次世代につなげるスマート農業技術の実証に取り組んできました

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スマート農業一貫体系の導入で農業をデータ化

 中山間地域の集落営農組織を舞台にしたスマート農業に約2年間取り組んできました。スマート農業は特に平地の大規模農業の方が注目されていますが、条件の不利な中山間地域でスマート農業を活用することで、どれだけ平地との格差を埋められるか、中山間地域ならではの特長を活かせるかが実証の目的でした。また、集落営農組織では、様々なオペレータがおられます。オペレータの技術差によって作業効率が異なったり、ほ場によって管理が十分に行き届かない等の課題に対し、スマート農業技術をデータ管理することで、どれだけ均一な農業ができるかに注目して事業を行ってきました。
 今回、トラクタから田植機、水管理、システム、コンバインまで、スマート農業一貫体系の技術を導入してきましたが、クボタのKSASを活用し、田んぼ一枚ごとの収量や食味、作業工程等が把握できたことで、経営が見える化でき、さらにオペレータ同士の情報の共有が図られたことが大きな成果だと思います。

中国エリアから2千名を超える視察を受ける

 中山間地域は高齢化も進み、人口も減少しています。そのような中で、次の世代に水田農業をどうやって引き継いでいくか、そのため、今回の実証を多くの地元の皆様、特に市内の農家の皆様方に見ていただこうと、当初から普及という点に力を入れて取り組んできました。その結果、中山間地域のモデル事例として、市内はもとより、中国地方の2千名以上の方々に視察していただいて、非常に身近な技術としてスマート農業を見てもらえたと思っています。これからも、実証を通じて関係機関の皆様からいただいた知見をもとに、スマート農機の導入促進を図っていきたいと思います。

関係機関との連携で広がった研究の幅
スマート農業の普及を図るため、データの活用方法を伝えていきたい

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鉄コ直播の成功の要因は、田植機や除草剤の進化

 鉄コ直播の成功の要因を上げるとすると、今回、実証で使用した直進キープ機能付田植機NW6Sに代表されるように、溝切機能や播種精度の向上など、田植機が細かい改善がされている点です。また、播種直後の除草剤や、発芽してからの初中期除草剤などのレベルが上がっており薬害も少なく、雑草が大きくなってても枯れるというような除草剤が開発されたのが大きいですね。さらにWATARASによるきめ細かな水管理を行うことで、苗立率の向上や初期生育の促進が図られた栽培で安定しました。

スマート農業の一番の目的はデータによる経営改善

 今回、食味・収量センサ付コンバインでデータを収集しましたが、どのほ場の収量が低いか調査して、その結果を次年度に活かして底上げを図ることで、全体の収量を上げることが目的です。実は、WATARASも膨大なデータが取れるんです。水管理の自動化もありがたいですが、それ以上に水位や水温データが取れるので、今年の収量、品質と照らし合わせて、細かく分析することで、来年度の水管理や除草剤、施肥に大きく寄与できます。本来、スマート農業というのはデータを使って改善していくというのが一番の目的だと思います。スマート農業の普及する時にも、農家の皆さんに、データの使い方を伝えていきたいと思います。

貴重な経験となったスマート農業実証プロジェクト

 スマート農業実証プロジェクトという国の実証事業は、コンソーシアムという形を取った事業ですが、今までこのような多くの機関と連携して行う試験実証は経験がありませんでした。農機メーカーや岡山大学、農協とか様々な団体が一緒になって研究しているので、とても研究の幅が広がりました。例えば、メーカーにはメーカーの見方がありますし、栽培側には栽培側の見方があるので、一つのデータにしてもそのデータの使い方が色んな観点から見ることができます。一緒に研究することによって、改善点も見え、コンソーシアムのお蔭で将来を踏まえた新たな課題や試験ができました。

スマート農業実証プロジェクト2020年度成果
(真庭農業普及指導センター作成中間検討会資料から抜粋)

実証課題

直進キープ機能付田植機による労力削減効果と植付精度向上

実証結果

●田植えに係る作業時間は密播苗や湛水直播技術の導入により、10a当たり1.8時間から1.5時間に、また総使用前箱数は、416箱(2018年)から148箱まで削減
→ 省力化・軽労化に貢献
●密播苗移植の欠株率が大幅に低減
① 育苗管理の改善で苗の徒長を防止
② 除草剤を移植同時から稲活着後のドローン散布とし薬害を回避



実証課題

中山間地におけるドローンの活用((病害虫・雑草防除)

実証結果

●ドローンによる除草剤散布の省力化を図るため250g豆粒剤の散布試験を実施。作業時間を従来の1kg粒剤散布から25%削減、雑草や薬害もなかった



実証課題

ほ場水管理システムの導入による水管理作業の省力化と水位、水温等データを活用した収量、品質の向上

実証結果

●昨年度は水管理作業時間が55%削減でき、平均収量は適切な水管理等で10a当たり39kg増加した。今年度はさらに綿密なスケジュール管理でさらなる作業時間の削減、増収を目指している。現在作業時間を集計中。

ワンポイントアドバイス
夏場の高温障害対策には、WATARASでの飽水管理が有効

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 近年の稲作では、温暖化による夏場の高温障害が問題となっています。よく知られているのが白未熟粒です。夏場に温度が上がり、微生物の活動が活発になると、土壌中が還元状態(酸素がない状態)が強まり、根腐れが進みます。それをいかに防いで根の活力を維持するかポイントになってきます。
 一般的に高温時の水管理には、間断かん水を行いますが、さらに一歩進んで、湛水時間をできるだけ短くする水管理として飽水管理があります。これは、一度、ほ場全体を湛水し、水を吸わせたら後は落水し、湛水がない状態を長く維持する管理方法で、高温時にはとても良い水管理です。田面に水がないと湿った地面から気化熱で土を冷やすという効果が期待できますし、酸素も土の中に入りやすくなり、根の活性が維持できます。
 今回の実証では、水管理で細かい管理が必要なところは、WATARASを使って入水・落水し、飽水管理の自動化を試みました。根が傷むと下葉が枯れ上り、ほ場に入ると枯れた葉が足に絡むのが分かりますが、今回、飽水管理をしたほ場では、下葉の絡みがほとんどなくほ場の中を気持ちよく歩け、飽水管理の効果を実感しました。

スマート農業実証プロジェクト現地レポート
経営の軸として本格導入を目指すスマート鉄コ





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