はじめまして。ファームサイド株式会社の佐川と申します。
私は阿部梨園という個人経営の梨農園で、「農家の右腕」として従業員の立場から経営改善プロジェクトを推進してきました。その経験から現在は、全国の農業者さんの経営改善をサポートしています。
今回は「農家の課題解決、なぜ!なんで?」と題して、経営や業務に関する小さな日常の悩みを解決しながら、より良い農業経営を実現する方策をお伝えしたいと思います。
早速、農家の皆様のお悩みに答えていきましょう。
(この記事は、2021年1月発行のクボタふれあいクラブ情報誌「ふれあい」42号を元に構成しています。 )
業務指示の内容を見直して、所要時間の目安を伝えよう
従業員の能力や意欲に問題があるケースももちろんあります。しかし、その前に、まずは皆さんが伝えている業務指示の内容を見直してみましょう。作業の手順や留意点は明瞭に伝えられていますか。わかりにくいことがあれば、判断が遅くなったり、悩んで時間を空費してしまうことがあるかもしれません。以前の阿部梨園では朝礼で口頭指示をするだけでしたが、それでは従業員の意識に残りにくいので、作業指示書を毎日作成して共有するようにしました。誰がいつどこの畑で何の作業を何時間かけて行うかを事前に決めて、業務のポイントをわかりやすく伝えるようにしたのです。これによって従業員は自分の好きなタイミングで作業内容を再確認できるようになりましたし、指示の取り違えも減りました。
何より、「作業指示書」で各作業にかかる所要時間の目安を定めたことで、従業員が作業ペースを意識しながら時間内に終わるよう努力してくれるようになりました。具体的な目標値が設定されているかいないかは、従業員の意識や集中力に大きな差をもたらします。「できるところまでやってほしい」ではなく、「1時間で3列を収穫してほしい」「30秒で1袋を目安に袋詰めしてほしい」と伝えたほうが能率が上がるということです。もし目標に達していなかったとしたら、何が足りなかったか振り返って検証してみましょう。判断が遅かったのか、動作が遅かったのか、そもそも作業の段取りが悪かったのか。スタッフ同士で数字を見合わせれば、コミュニケーションもはかどります。改善したらまた作業時間を計測して、効果を再検証してみてください。だんだんと目標値に近づいていくはずです。
もちろん、問題の原因が一つとはかぎりませんし、簡単に片付くものばかりではありません。でも、一つひとつ原因を解明して改善していけば、明るい未来に一歩近づきます。一緒に小さな経営改善を続けてみませんか。