山口県萩市の上小川地区では、稲作を中心とした農業が営まれてきましたが、近年、高齢化等による離農が加速。地区内の法人の受託面積は、年々増加傾向にあります。一方で、受託する法人の構成員の高齢化も課題であり、若手の育成も急務。そうした中、農事組合法人 日の出様では、営農支援システムKSASの活用、若手社員の登用等、経営の将来を見越した仕組みづくりを進めています。昨年秋には、クボタコンバイン ディオニス DR595の食味・収量メッシュマップ仕様機を導入。ほ場内の地力を「見える化」する食味・収量メッシュマップのデータ活用について、橋本代表にお聞きしました。
ディオニスDR595
ユーザーインタビュー
メッシュマップのデータを翌年の施肥に反映させる。
将来的には、そういう仕組みを組立てたいです。
「食味・収量メッシュマップ」は、クボタコンバイン ディオニスのオプション装備。高精度なGPSユニットと新開発のこく粒流量センサにより、稲を収穫したほ場の食味(タンパク含有率)・収量を細かく測定し、メッシュ(網目)単位で表示します。メッシュ一辺の長さは、10m、15m、20mから選択可能。ほ場内のバラツキを把握できるので、翌年の施肥設計など、ほ場改善に役立てることができます。
現在、日の出では、稲刈り時に取得した食味・収量メッシュマップのデータを活用して試験栽培を実施しています。橋本さんによると「メッシュマップのデータをもとに、3枚のほ場で慣行・減肥・増肥と施肥設計を変えて食味・収量を確認している」とのこと。上小川地区では基盤整備が進行中で、1ha超の大区画ほ場も作られる予定。「合筆した大区画では、ほ場内の地力の差によって作りにムラがでてしまう。施肥設計を変えることで地力を改善し、収量アップに繋げられるか。試験栽培の狙いはそこにあります」。現状は3枚ですが、さらに多くのほ場の施肥設計に活用して検証を続ける予定。「将来的には、食味・収量メッシュマップのデータを、翌年の田植機での施肥に反映させる。そういう仕組みを組立てていきたいです」。基盤整備後を見据え、高収量・高品質に向けての取組みは続きます。
5年後、10年後、若手社員が中心になることを見据え、
栽培管理、ほ場管理ができるシステムを構築していく。
日の出では、試験栽培以外にも食味・収量メッシュマップのデータを様々な方法で活用しています。ほ場1枚ごとの収量のデータは、収支の確認に活用。「私達の法人は、エリアごとに担当者が一貫してほ場を管理する体制です。担当者それぞれの管理の成果が収量に反映されるので、社員や組合員に公表して生産意欲を高めています」。食味(タンパク含有率)のデータは、山田錦(酒米)の収穫で活用。「稲刈りしながらタンパク含有率を確認。70石の乾燥機を2台準備し、タンパク含有率の違いで仕分け乾燥を行っています。酒米はタンパク含有率で価格が違ってきますので、仕分け乾燥がきちんとできるのはありがたいですね」。
「将来的には、若手の社員が経営の中心を担うことになる。その時を見据え、このコンバインで得られるデータやKSASを活用し、栽培管理やほ場管理を行う仕組みを構築していきます」と語る橋本さん。地区の5年後、 10年後を視野に、規模拡大、スマート農業への移行を、今後もさらに力強く進めていかれます。