大切に育てた青果物を傷つけることなく、糖度や酸度、内部障害度を測定できる、クボタ青果物品質評価装置『フルーツセレクター』。その測定精度は、公的研究機関でも高い評価を得ています。発売から20年、今年5月には高い精度を維持しながら使いやすく、スタイリッシュなデザインへと生まれ変わった新型機を発売。今回、新型フルーツセレクターが、現場でどのように活用されているのか、導入いただいたお客様にお話をお伺いしました。
測定スピードが格段にアップ!
「今年から新しくギフト用のメロンを販売することが決まり、今までにない商品、付加価値をつけることで、差別化が図れる商品を販売したいと、フルーツセレクターの導入を決めました」と話すのは、青果物仲卸業として北海道旭川市に本社を置く、旭印 旭川中央青果株式会社の窪田英明さん(※窪田英明さんの『英』の草冠は、旧字体となります)。窪田さんが在籍する果実部は、全国の市場や農協、生産地から様々な青果物を仕入れ、全国各地のス-パーや小売店などへ販売するほかに、果物のギフトや宅配事業も行っています。
実は窪田さん、今回導入したデスクトップタイプではなく、ショルダータイプのフルーツセレクターを以前に使ったことがあるそう。「今と同じようにギフト用のメロンの測定に使っていましたが、持ち運びができるので、私たちが使うというよりは、主に農家さんが畑で収穫時期の見極めに活用していました」。その当時から、フルーツセレクターの測定精度の高さに注目していた窪田さん。同じような糖度計もあるなか、「測った時のブレが非常に少ないこと。導入前、クボタの担当者とやり取りをする中で弊社の要望に対して、スムーズな対応をしてくれた」ことが決め手となり、導入に踏み切りました。
窪田さんが、新型機に最も魅力を感じておられるのが測定スピード。デスクトップタイプは光量のアップにより、測定時間が従来機(K-SS300-LC)に比べ、2/3に短縮しました。「測定スピードが格段に上がっているので、処理能力が増えたのはもちろんのこと、測定を待つストレスが軽減され、仕事がはかどります」。今年はギフト用メロンの販売に乗り出した初年度ということもあり、1台で多いときでも1日に200玉から300玉を測定。作業時間は、1時間から1時間半になるそうです。
「操作も以前と比べて使いやすくなり、使い勝手が良いですね。これなら私が不在の場合でも、別のスタッフが同じように測定できます。誰でも正確に測定できるというのは非常に大きいメリットです」。新型機は、5.7インチのタッチパネル付きカラー液晶を採用。必要項目に絞った画面構成で操作性が向上し、使いやすくなりました。
メロンを傷つけることなく、糖度が測定可能。障害果の発見にも
今回ギフト用に販売しているメロンは、糖度14度以上のもの。「基本的にメロンは高価なものです。果肉を切取り果汁を搾って測定するタイプの糖度計だと、どうしてもロスが出ます」。そのため、一部のものしか切取れず、全てのメロンを測定することができません。しかも、切取った部位により糖度が異なるため、糖度にバラツキが出ます。
一方、クボタのフルーツセレクターは、サンプル台に青果物を載せるだけで、糖度のほかに酸度や重量も測定可能。青果物を傷つけることなく、測定できる秘密は、クボタの『近赤外分光分析技術』にあります。その技術とは、近赤外線を活用した測定法で赤外線の一種である、近赤外光を青果物に照射し、青果物を通った近赤外光の波長(透過光)を計測し、糖度を測るというもの。光が透過した部分の平均的な成分を測定できるので、精度の高い測定が可能です。この技術は、クボタのKSAS対応コンバインに搭載されている、食味センサにも応用されています。
また、外観からは判別できない内部の生理障害も検知できます。「今年の北海道の生育環境下では、まず障害果は出ないと思いますが、障害果が出る年は生育期間中、メロンにとってストレスが掛かることが多い、たとえば成長する時期が非常に寒いなどの場合に出やすいとよく言われています。症状としては、糖分が変化してアルコール発酵し、食べたときに少し舌がピリッとすることがあります。症状が進むと、苦味を感じたり傷んだりします。障害果は農家さんが見て、ある程度判別できますが、100%取り除けるわけではないので、ここで怪しいものは検査して、その残りの数%をフルーツセレクターではじければ」と窪田さんは、お客様からのクレームをフルーツセレクターで、最小限に抑えたい考えです。
高級フルーツの代名詞でもあるメロン。 「私たちは仕事の中で何万個という数のメロンを扱っていますが、お客様にとってみれば、1年に1個かもしれませんし、何年かぶりに購入したのかもしれません。手に取ったその1個が美味しくなければ、次回買っていただけないかもしれない。ひょっとしたら、メロンを毛嫌いしてしまう原因になりかねません。だとすれば、品質に間違いのないものをお届けして、美味しかったと喜んでいただきたい。他の人にも贈りたい、もう一度食べたいと思っていただけることが最も重要です」。
フルーツセレクターで品質の信頼性を確保。
ブランド化、販路拡大を後押し
こうして厳しく選果したギフト用のメロンは、お中元として大手量販店で取り扱われています。「お店の方のお話によると、購入したメロンが甘くない、美味しくないという指摘をお客様から受けることがあるそうです。そこでフルーツセレクターで糖度を測定することで、クレームを少しでも減らしていきましょうという私どもの提案に、大変興味を持っていただきました。今までは農家さんが、ある種職人のような感覚的な判断で出荷していましたが、そこに数値的な裏づけをして美味しさを見える化したのが、取引きのはじまりです」。
今回、大手量販店に出荷しているギフト用のメロンは、富良野の生産者と共同で生み出した、オリジナルブランド『天果(てんか)』。ネーミングからパッケージのデザインまで、窪田さんが手掛けています。「富良野は立地的にメロンを作る環境として非常に素晴らしく、美味しいメロンがたくさんできます。その美味しいメロンを、どうしたらもっとお客様に認知していただけるかを考えたとき、お客様が分かりやすい『糖度』という指標をフルーツセレクターで明確にする。そこでまずはブランドを知ってもらって、次にまた購入していただく形を取りたいと思っています」。フルーツセレクターで購入者の裾野を広げ、リピーターが確保できれば、商品の取扱量が増え、生産者の収益向上にもなり、産地がますます活気づいていくことにもつながります。
「今年は大手量販店と主に取引をしていましたが、糖度を測定する取組みを面白いと思ってくれている企業様がいます。次年度は弊社でもやりたいというお話を何社かいただいており、品質や糖度をフルーツセレクターで保証する取組みに期待が高まっています」と、販路の広がりに手ごたえをつかまれている窪田さん。旭川中央青果様の取組みに、フルーツセレクターが一役買っています。