施設園芸に取り組む方にとって、作物の品質や収量に密接に影響するかん水施肥は、手間と時間が大幅に掛かる作業となっています。また、生産者の経験と勘によるところが大きく、新規就農者にとってはハードルの高い作業です。この2つの課題をAI技術で解決するのが、クボタ AIかん水施肥ロボット「ゼロアグリ」。今回このゼロアグリを活用し、かん水施肥をスマート化しているイチゴ農家様にお話をお伺いしました。
クボタ AIかん水施肥ロボット ゼロアグリ
初心者には難しいかん水施肥を機械に任せることで、
他の作業に時間が割ける
ゼロアグリは忙しい生産者に代わって、かん水(水やり)と施肥(肥料やり)をAI技術で自動化する、AIかん水施肥ロボットです。タイマー式等、他の自動かん水装置との違いは、日射量と土壌水分量の両方のデータを基に、作物にとって最適なかん水量やタイミングをAIが「考え」、自動でかん水施肥を行うこと。2015年の本格販売開始から2021年10月現在、全国で300台の導入実績があります。
このゼロアグリを2021年9月に導入し、福岡県のブランドイチゴ「あまおう」の栽培に活用しているのが、野田智大さんです。「米も作っていますが、イチゴは去年から。4棟のパイプハウスで、14a栽培しています。去年は栽培1年目ということもあって、かん水の仕方が分からず、周りの人に聞いて回ったり、加減が分からず水を流しすぎて通路が水浸しになり、作業性が悪くなったりすることもあって...。栽培時期も米の収穫や精米加工と重なるので、本当に困っていました。それがゼロアグリに、かん水を任せることができるようになったことで、1回につき20分ほど掛かっていた手かん水がゼロになり、他の作業に時間が割けるようになった。水管理のストレスからも解放されました。」
導入メリットは、その他にもあると言います。「こちらの産地では品質を維持するため、収穫後のかん水を推奨しています。収穫後、ゼロアグリが自動でかん水してくれることで、今までかん水していた作業時間をイチゴを詰める時間に充てることができるようになったので、時短・省力化にもつながっています。」
自宅にいながら遠く離れたハウスの土壌環境をモニタリング可能
ゼロアグリのもう一つ大きな特長として、自宅にいながらスマートフォンやパソコンで、遠く離れたハウス内の土壌環境をモニタリングできることがあります。「操作はスマホでしています。1日1回、夜データを見る習慣をつけています。初心者なので、収集したデータを次年度の栽培に活かし、品質や収量の向上につなげていきたいんです。」ゼロアグリは土壌水分量、EC値、地温を10分に1回計測し、記録。数値はグラフで「見える化」され、比較・分析も容易で、栽培の振り返りが行えます。さらに、土壌水分値や液肥濃度の調整・設定もスマートフォンなどから遠隔で可能です。
「今日みたいに天気が良ければ、水やりに行く必要がありますが、ゼロアグリが自動でやってくれるので、僕は家にいればいい。自由な時間が増えました!」土壌環境はどこからでも確認することができるので、ハウスに張り付く必要もありません。
高精度なかん水施肥で、安定した品質のイチゴがつくれるように
イチゴの株元にピンポイントでかん水できる点滴チューブを使って、少量多かん水で液肥を施用する養液土耕栽培に取り組む野田さん。窒素を少な目に栽培する野田さんのこだわりに、ゼロアグリが大いに役立つと言います。「生育状況を目で見て確認し、少し足そうと思えばゼロアグリが最適な量を計算してくれるので、考えなくて良いのが嬉しいですね。本来なら経験を積んで蓄積したノウハウから判断、計算していくのでしょうが、僕は初心者ですから機械に頼る。しかも、ハウスにわざわざ行かずとも、スマホで簡単に変更できるのが良いですね!」。
野田さんは、土壌水分量についても重視しています。イチゴは急速に水分が変化すると裂果の原因になったりすることから、土壌水分を一定にすることが重要です。「土壌水分量はオートで、常に一定量を保つようにしています。手かん水では、一粒あたりの水分量にバラツキがあったように思います。でも、今はそれがないかな。どれも果皮の張りが良いです。」水分を豊富に含んだ、みずみずしい状態で出荷ができていると言います。「ゼロアグリを導入したことで、ラクになったし省力化もできた。新規就農者に、ゼロアグリはおすすめしたいですね。」
今後の目標は「まずは今の規模でいいものを作ることから。人の想像を超える、美味しいイチゴをつくって大成したいです!」と、熱い想いを語ってくれた野田さん。ゼロアグリが野田さんその夢を大きく後押しする、頼もしい右腕となっていました。